3話『エッチなHDDの隠し方』
そして、学校が終わり誰もいないマンションに帰宅すると玄関の電気がついていた。もしかしたら電気をつけたまま、家を出てしまったのかもしれない。
「電気代……かさむな……」
両親は、民俗学研究で様々な所を飛び回っているため一度家を外すと半年帰りたくても帰れないため、異世界から帰ってきた瞬間から、俺は、一人暮らしが確定したのだ。バイトはしていないから、仕送りを頼りに生きているのだけれど。
「あ、お帰りなさい。伸介、私はお腹すきました。肉じゃが作ってください」
「ただいま、残念だが、今日は、回鍋肉だぞ……って!千三十!なんでうちにいるんだよ!」
「それは、伸介がどこかへ行ってしまっていた間この家を掃除していたのは、私ですから」
「あー、だから、ここに帰ってきた時、部屋がきれいだったのか」
平然とした様子で俺の家に居座っていた千三十だが、合いかぎを見せ事情説明をしてもらい俺は、納得した。ロリ幼馴染のおかげで、俺は、普通に家にかえられたと考えると感謝してやまない。
「そうですよーおかげで、伸介のエロ本の隠し場所ももう知っていますよ。押入れの奥。ちなみにパソコンの中にあるエロフォルダのパスワードは、自分の誕生日です」
「い……異世界に行ったことによる思わぬ弊害が……」
「異世界?まあ、伸介がいない間に私も、少しは変わったのですよ。それに安心してください。エロフォルダもエロ本も全部捨てましたから!もう恥ずかしがる必要は、ないです」
「いや、待ってくれ、最後の話は知らないぞ」
パソコンのエロフォルダを消されたのは、誤算だった。外付けのHDDに入っていなければ、俺は、発狂していたかもしれない。
「もちろん、外付けのHDDも全部消しました!スキのない幼馴染に感謝してください」
「鬼め!何の権利があってそんなことを!」
「幼馴染の社会的尊厳を守るためですか?」
違う、絶対に自己満足だぞ。
しかし俺も大人、エロフォルダを消された怒りくらいは、今日の料理の豚肉に八つ当たりすることにした。
それから、俺は、オープンキッチンでフライパンの中でいためられる豚肉にエロフォルダを消された怒りの八つ当たりをしていると家のインターフォンが鳴り響いた。
「およ?こんな時間に来客とは、珍しい。千三十、少し火を見ていてくれー」
「わかりましたー。適度な所で、火はとめますからね」
「あいよー」
俺は、火を任せて、玄関に行くと声が聞こえた。
「夜分遅くにすみません。本日隣の部屋に引っ越してきたものです。ご挨拶をさせていただきたくてお伺いさせていただきました」
「はーい、今開けますよー」
どこかで聞いたことのあるような声だったが、流石に聴き間違いだろうと思い扉を開けるとそこには、見覚えのある金髪……真雁エリーゼがいた。
「はじめ……って、げ……。ななな!なんでアンタがいるのよ!シンスケ!」
「それは、こっちのセリフだ!同じ病院に入院しているし、学校じゃ、同じクラスになるし、仕舞には隣に引っ越してきただって!おどれはストーカーか!」
なんというか、もう、偶然じゃなくて、意図的とも思えるような出会い。神様がいるのなら、俺は、本気で恨んでしまうが、火に油を注ぐ様に、顔を合わせれば、売り言葉に買い言葉、それが、俺たち。いい加減何回も偶然が重なったからか慣れたがそれでも本能的になのか喧嘩は始まる。
「それは、こっちのセリフよ!なに!なんで、行く先々にアンタがいるの!」
「お前が、俺についてきているのだろうが!」
「なんだって!」
「何よ!」
「あ……あのー。このやり取り、前も見たのですが……やはり、エリと伸介は、ネトゲか何かで知り合ったのでしょうか」
俺と、エリーゼのやり取りを見るのが二回目の千三十は、突然来ては怪訝そうに聞いた。
「あー、どういう関係なのだろうかエリーゼ?」
俺たちは、一時休戦、病室では、結局伝えきれなかった異世界のことをどうやって話そうかとエリーゼに振った。
「私に振る!?えーと。そうねー、う……宇宙人に攫われて異世界に行った者同士?」
「いや……流石に私でも、それが嘘だということくらいわかります」
エリーゼのごまかしが、通じる訳もなくジト目で俺たちを見る千三十。
俺は、このポンコツ金髪の変わりにちさとに話し出した。
「あー、えと、俺たちは、そのあれなんというか、運命的な繋がりというか、偶然によって顔見知りになったというかなんというか……」
「はあ……私としては、詳しいことを聞きたいのですが、こっちに戻ってきてから、空白の一年について全く喋っていないみたいじゃないですか。お巡りさんにも記憶がないって説明していますし……」
俺たちを寂しそうにこっちを見つめる千三十。異世界について、話しても流石に理解されないことくらい、病室での一件があって以来、分かっていた。だから話すことはやめ、俺は、観念し、千三十に謝った。
「ごめん!本当に説明が難しいんだ!俺たちの関係は!」
「そうなのごめんなさい!チサト!」
俺の意図を汲んでか、一緒に千三十に謝るエリーゼ。エリーゼも病院で千三十とは、会っているため顔見知りであるためか、しっかりと謝っていた。
「もうー!分かりました!お二人の関係に突っ込み入れません!だからそんなに深々と謝らなくていいですから」
俺たちの不誠実な態度にも関わらず、笑顔で千三十は、答えてくれた。
「ありがとうチサト……助かるわ」
「いえいえ、私もなんだかいい辛いこと聞いてしまっていたみたいで……すみませんでした。所で、エリたちは、なんだか仲がいいみたいですが、付き合っているのですか?」
千三十は、ふと思いついた様に俺たちに訪ねてくる。
「いや!どうしたらそう見える!ありえないだろうエリーゼとなんて!」
「そうよ!こんなのと私は、付き合えないしそれにこいつは……」
エリーゼは、ジャンヌのことを話そうとして、気が付いたかのように口をつぐんだ。
きっとそれは、異世界を信じてありきの話になってきてしまうからでもあるが、もっと彼女には特別な理由があったから。
魔族と勇者、対立した立場であった三年間で、唯一エリーゼが俺に謝ってきたことにも関係があるから。
「まあいいのですが……あのエリの手にあるものは、なんですか?」
話題の転換がうまい千三十。昔からであったが、千三十は、人の気持ちに聡いのか、話の振りがうまく、クラスでも人気者だった。
当時は、それが、当たり前で凄いとは、思っていなかったが、離れている期間が長く、久しぶりに彼女の聡さに気が付くとそれがどれだけ凄いことだったのかが分かる。
「あ!これは、ソシナ?ってやつ。つまらないものですが……うーん私的には、全然いいものだと思うのに、なんで、日本ってこんなこと言うのかしら?まあ、パパもママもひとり暮らしするなら、こう言いなさいって言っていたけど……不思議」
「それが日本人の心ってやつですよ、エリ」
首をかしげるエリーゼに向かって笑顔で返してあげる千三十。
「そういえば、エリーゼは、ハーフっていうのは、知っていたけれど、何処とのハーフなんだ?宇宙人とかか?」
俺は、こいつと出会って結構経つのに全くと言っていいほど、エリーゼのことを知らないと感じているとふと聞いていたのだが、エリーゼは、千三十に対しての態度から一変少し嫌そうな態度になった。
「いや、普通にイギリス人と日本人のハーフ。なに?なにか問題でもあるのかしら?」
「いや、気になっただけだろう!なんだよ!その態度!腹立つな!」
「あんたが最初に言い出したのでしょう!私は、悪くない」
「二人とも……」
また、喧嘩が勃発しそうになっていたのだが、俺たちの喧嘩は、しなかった。
なぜなら、そこには……
「とりあえず、二人ともご近所迷惑になりますから、黙りましょうか」
なんと言うか、千三十の笑顔から、物凄いプレッシャーを感じた俺たちは、その後、普通に別れを告げて普通に元の生活に戻って行った。
なんというか、これ以上騒ぐと、なんか本当に殺されそうな雰囲気がしたから。
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