アクシーノ・リテアには定められた運命がある。生まれた月によって才能や適性に特徴があり、その適性に合った職業に就くことになる。それに逆らうことは天の意思に背くことに近く、生まれ持った「晶籍」は黒く染まってしまう。この世界で晶籍なしは蔑まれ、まっとうに生きることすらままならないのだ。
マクリエ、イシア、ヴァーテの三人娘と共に放浪の旅をしている青年エゼルは、かつて国の英雄と呼ばれた男である。彼がなぜ、記憶を失った三人の「下僕」として同道するのか。アクシーノ・リテアを混沌に落とした僭王リザ。彼女が最期に遺した言葉が、エゼルを今も苦しめる。「私は再び復活する」。三人のうち誰かが、リザの子であるから。
リザとエゼルの関係性が、とても好きです。運命的で。別にラブロマンスだけが運命ではありません。僭王リザが復活を遂げてもなお、エゼルに逢いに行く。そして殺しあう。情熱的であり、目に見えている衝突。それがいつ訪れるのか。リザの子は誰なのか。エゼルの葛藤、三人娘への思いも含めて、やっぱり運命的だなと感じてしまいます。回想含め、二人の思想の対峙、歩み寄れない決定的な違いが、悲しくもありますがドラマティックでもあります。この物語において「運命」というのはとても皮肉な言葉なのですが、だからこそ、この二人はそうなのだと思えてなりません。