体験したことを書く作者へ
自分が実際に体験したこと、遭遇した事件、エピソード。どんなに小さなことでも、それを入れずに書くなんてことは不可能でしょう。しかしそれを書くときに、やっぱり「自分と距離を置くこと」は大切です。
あるとき、私は自分の体験したことを書いて、小説の合評会に行きました。いろいろな人にぼろくそ言われました。単純に、小説として面白くなかったのです。
ですが、「だってこれは本当にあったことだもん!」とむきになって言い張っている場合ではないのです。
私のいち体験など、読者にとってはどうでもいいのです。その小説が、ひとつの物語として面白いか否か。大切なのはそれだけです。
たとえ自分の身に起きたことでも、それを小説にすると決めた瞬間、そのエピソードを「全力で」面白くする必要があるのです。
話が面白い人や芸人は、起きたことをそのまま話しているわけではありません。すこし誇張したり、順番を変えたりして、はじめて聞く人が「面白い」と感じるように「効果的に」しゃべっているわけです。
ならば、小説だって「効果的に」エピソードを配置すればいいのです。
難しいことではありません。小説家はジャーナリストではないのですから、いくらでもウソをついていいのです。面白けりゃあいいのです。だって物語なんだから。
「あなたはつまらないって言ったけど、これは実話だから仕方ないんですよ」
これは最悪の弁明です。
小説を書くのなら、面白いものを書け。
少なくとも、自分ではめちゃくちゃ面白いと思えるものをちゃんと書け。
「実話だから」と自分に言い訳して、自分でもあまり面白いとは思えないものを書いていませんか?
それがいちばん最悪です。
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