襲来!未来型少女(リニアガール)

 よく晴れた朝。今日も平和である。

 二人の少女が向かい合って話している。近くのソファーにはもう一人の少女が寝ている。

 そんな中、彼女らはいつも通り話していた。

「ねえ、先輩! 今日何か来るらしいよ!」

「何かって、何よ。アイちゃん」

「何かは何かだよ!」

「だから何よ……」

 いつもこんな感じである。

 だが、次の瞬間。


 ボゴォォォォォォンッッ


 爆発音。

「なんだ? 敵襲か?」

「カゴちゃん、なに寝ぼけたこと言っているの!?」

 ソファーで寝ていた少女――ゆりかごちゃんが起きる。

「わーい、何か来たー」

「アイちゃんってこんなキャラだったっけ!?」

「茶番はここらでおやめくださいですの。いい加減うるさいですの」

 声がした。その方向には、チェーンソーを持ったロリータファッションの少女が立っていた。

 そして、その後ろには――

「なんで、壊れてるの?」

 青い空。壁がない。ただ、コンクリート片が散っていた。

「おっと、自己紹介が遅れましたの。わたくし、リニア誘導インダクションモーターと申しますの。お気軽に、“リニア”とお呼びくださいましですの」

 不自然なお嬢様口調を操るその少女は、質問には答えず、代わりに自己紹介をした。

 それを見たゆりかご――かご型三相交流誘導電動機は、激怒した様子でリニアと名乗ったその少女に近づく。

「てめぇ、ついに来やがったか。待ってたぜ」

「あなたこそ、その汚ねぇ口調をやめてくださいまし? 正直、反吐ヘドが出ますの。ぺっ」

 一気にヒートアップする二人。一触即発である。

 そして、リニアの態度の急変ぶりに、ほかの二人は『うわあ……』と引いていた。

「何故ここに来たんだ、行きたいところに行けねえ欠陥商品」

「あなたを倒してこの世界のモーターを私に統一するためですの。この旧世代の遺産」

「バッカじゃ中目黒、なに祐天寺www。そんなことできるはずねえじゃん。よく考えろ、変な音のする機械」

「アホはあなたじゃないですの? 私のメリットもわからないですの? あ、脳筋パワー厨にはわからねぇか。ぺっ」

「何だてめえ。私はまだ製造されとるぞゴルァ」

「あなたこそ、変な音はお互い様じゃねえかですの。ファッキュー」

「あんだとォ!?」

「ですのォ!?」

 にらみ合っている。

「……二人の間に何があったのか気になるよね」

「確かに。明らかに前から知っていたようだし」

「だよね~」

『うるせえ黙ってろ(ですの)』

『あ、ハモった』

『うるさい!』

「なんだかんだで仲良いのかな、この二人」

『仲良くなんかないもんっ!』

 ……まだにらみ合っている。


 しかし、変化が起きるのは、五分後のことである。

「ふっ、お前も大きくなったな。リニア」

「なっ、何ですの急に!」

「なんでもない。そろそろケリをつけようぜ」

「……望むところですの。もちろん、ですのよね」

「ああ。全力で相手してやるさ」

 二人は一旦深呼吸をした。リニアは構えていたチェーンソーを下に置いた。

 そして――

「オラァァァァァッッッッッ」

「ですのォォォォッッッッッ」

 互いが互いに殴りかかる。それは――


 ゴスッ


 互いの頬に衝撃を与える。

「ふふっ、いい拳でしたの。これでこそお姉さまですの」

「ああ、そっちもいい拳してたじゃねえか。おかえり。リニア」

「お姉さま、だいすきですのっ!」

 そう言って、ゆりかごに抱きつくリニア。

 傍観していた二人は何が何なのかもう理解不能だといわんばかりにぽかーんとしている。

「えっ? チェーンソー持った女の子が壁破壊して、ゆりかごパイセンとけんかして……」

「殴り合って、仲直りして、妹で……」

『……もう、わけがわからないよ……』


「これで、プリン勝手に食ったことはなかったことにしてやる」

「ありがとですの!」

「え、もしかしてさっきのけんかの理由って……」

「そう、数ヶ月前にあたしのプリン勝手に食ってそのまま雲隠れしちまったんだよ、コイツ。それで怒っていたんだ」

『けんかの理由ちっさ!』

「でも、この子ぜんぜん似てないけど、本当に姉妹なのかしら?」

「実は違う。コイツがあたしのことを姉さんって慕っているんだ」

「お姉さまはお姉さまですのー」

「はいはい。じゃあ、一緒に買い物にでも行こうぜ」

「ハーイ、ですの!」

 そうして、またぎゅっとするリニア。

「……そんなにくっついてると、歩きづらいだろ」

「良いですの! お姉さまは、わたくしのものですのーっ!」

「ならよし。いくらでもしがみつきな!」

「わーい、ですの!」


「私たち忘れられてない?」

「そうね。ちょっと悲しい」

「はあ、はあ、姉妹百合最高」

『作者黙って』

「あ、ちなみにリニアインダクションモーター使っている地下鉄って“鉄輪式リニア”なんてたまに言われるけど、アレのモーター音が吊り掛け式っぽくてすこ」

「作者の変態的な豆知識はいらないよ。あと、上級者しかわからないし」

「ちなみに、今回出てきたリニア誘導インダクションモーターは超高速鉄道に使っているやつじゃないからね。別物よ、アレは」

「今度はまともなやつありがとうね。とりあえずゴーホーム」

「え? 駅のプラットホームに?」

『駄目だこの人もう手遅れだ』

 異口同音で言った。

 ……この世界では作者は嫌われ者なのか?

 にしても百合とか最高だわ。こんな風にいちゃついている女の子を見ているだけで股間がキュンキュンして……

『あ、こいつ何をしている!』

 ……いちゃついてた二人に気付かれた。

 追いかけられる作者おれ。力関係の逆転が激しい。

 男と女だからといっても、相手は現役のモーター(高性能)。かたやこちらは一般人。むしろ体力はないほう。そうなれば当然――

 程なくしてつかまった。縛り上げられる。

「フフフ、コイツはどう調理しようか」

「お姉さま、二人で愛のラブラブ殺人ラッシュはどうですか?」

「おお、それいいな。でも殺害しない程度にしてくれよ」

「ハーイ」

「いやぁぁぁぁぁぁ」

 恐ろしいことを言っている。リニアがさっき置いたチェーンソーを持ち上げた。

(やめて。お願いだからやめて! というか、俺が書きたかったのはこんなバイオレンスコメディーじゃない! むしろ生○会の一○のようなほのぼの日常系が書きたかったんだ! バトルなら別作品で間に合ってる! だからやめて! 怖いから! いやぁぁぁぁぁ!)

 作者は倒されたのだった。


「あ、現実の作者は生きてるので、まだ続く(はず)ですよ~」


 ちなみに、その後。


「お前、またあたしのプリン食っただろ!」

「食ってませんの、このバァァァカ」

「ファッキュー!」

『よく飽きないね、あんたら!』

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