第3話朝ごはん
自分の部屋を出て
リビングに入り、一言。
「お父さん、お母さんおはよう」
「「おはよう!凛」」
二人の声が返って来た。同時に返してくれることがどこか嬉しい。
お母さんは台所に立ち、一生懸命何かを作っている。普段はもうお皿を並べているのにどうしたんだろう。
台所を覗こうとすると
「あーー!もうちょっと!もうちょっとでできるから机で待ってて!」
とお母さんに言われ席につく。
机にはお父さんも座っていた。
お父さんはテレビのニュースを見ているから、喋り相手がいなくてふと机に目を留めた。
黒色のシンプルなデザインだが、そこがまたかっこいいと思っている。
これを買ったのは中学生の時だった。
お店にお父さんたちと机を買いに行ったとき、
「どれがいい?」
と聞かれたからこれを選んだ。
今から思えばお父さんたちは別のをじっと見ていた気がする。
これで良かったのだろうか。
「どうしたんだい、凛ぼーっとして。」
お父さんから話かけられたので答えた。
「いや、この机を選んだ時お父さんたち別のをじっと見ていた気がするけど良かったの?」
少し思いきって聞いていると、お母さんがお皿を持ってきて机に並び、椅子に座った。
座っている席は自分が一人でお父さんとお母さんが向かいに座っている。
お母さんが
「そっか〜、凛はそれが気になったんだんね。その質問には御飯を食べながら答えるから、いただきますしよう?」
はぐらかされたわけではないのでうなずいた。
「「「いただきます」」」
そう言って自分のお皿に目を向けるとびっくりした。
だって煮込みハンバーグと、スクランブルエッグとサラダがのっていたから。朝から量が多すぎる。ちらりと二人のお皿を見るとスクランブルエッグとサラダしかのっていない。きっと自分を読呼んだ後に急いで作ってくれたんだろう。
「お母さん、このハンバーグは・・・」
量が多すぎる、と言いかけたがやめてしまった。
だって、お母さんが食べてくれるよね?食べてくれるよね?というキラキラした目で見つめてきたから。
しょうがない、まず一口食べようと思って口に運んだ。
それが、美味しかった。濃厚なトマトソースとお肉のジューシー加減がなんとも言えない美味しさだった。
「お母さん!美味しいよ!」
と勢いをつけて言うと、お母さんはにっこり笑って
「凛のその笑顔が見たくて作ったの。あなたは笑っている顔が一番素敵だと思うわよ!机を選んだ時もあなたの笑顔が見たくて!ねえ、お父さん」
「その通り!凛にはいつも笑っていてほしいな。」
そうだ、この二人は自分にとても甘い。でも嬉しい。前世では両親がいなかったから。というか、親という概念がなかったから。ほんわりとどこからか生まれてきたって感じだったからね。まあ、自分自身がお父さんではあったんだけども。だから、お父さんとお母さんに素直に気持ちを伝えてみる。
「ありがとう!できるだけ笑顔でいるよ!!」
そう言いながらもう後少ししかないハンバーグをいれた。
「そういえば、凛は彼女とか好きな人いないの?」
うわあ、話題が突然変わった。
「う、ううん・・・」はぐらかして言いよどんだ。
こうなったら逃げるしかない。だって伊邪那美命ーイザナミを探すって決めてるから。お互いのことをイザナミ、イザナギと前世では呼び合っていた。言いやすいからね。しかしイザナミを探して、もう一度会いたいから他の女子には興味がないと言えるはずもなく、最後のハンバーグの一口を口に入れ
「ごちそうさまでした!」
カバンを持って足速に玄関に向かう。
お母さんが、
「彼女見つかったら行ってねー行ってらっしゃい!」
お父さんが、
「気をつけてなー」
と言ってくれた。お父さんは彼女ネタについては聞いてこない。というか、聞きたいけど聞いちゃだめかなみたいな感じだ。
お母さんは興味津々だ。まあ、そこもお茶目でかわいいと思うが。
「行ってきます!」
そう言って玄関を出た。
そこには自分の玄関の庭で自分と同じ制服を着た青年がたくさんの他校の女子といちゃいちゃしながら座っおり、自分を見つけると
「おはよう、凛」
と言ってきた。
遠い昔から君が好き。 平山奏 @kojiki
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