剣契(前編)Ⅶ エピローグ



オドが目を覚ますとそこは緑鹿の時もそうであったように海蛇を仕留めた水場の前であった。


オドは海蛇の抜け殻と青蛇せいだから受け取った短剣を丁寧にしまうとゆっくり立ち上がり帰路に就く。


洞窟の外に出ると東の空から太陽が昇ってくるのが見える。


「、、、あれ?」


オドは違和感に気づく。


緑鹿の時のように青蛇と過ごした時間が実際の時間の流れと切り離されていたなら、せいぜい夕方くらいのはずなのだが、オドの目の前の光景は明らかに夜明けであった。


「出てきたぞーーーー」


突如、オドの斜め上から声が聞こえてくる。


見ると洞窟に繋がる通路の上からカイが叫んでいるのが見える。その後、ワラワラと沢山の他の天狼族の面々が集まってくるのが見えた。




オドが後のちに聞いた話では、オドは5日目に洞窟に入ってから約3日間、家に帰らず行方不明になっており、必死の捜索が行われていたとのことだった。結局、オドは洞窟から出てきていないという結論となったが、日々、そして入る人物によってその形を変える洞窟に捜索に入るのはむしろ危険であった。そこで、交代で洞窟の入口を張り込む流れとなり、捜索3日目の朝に洞窟から出てきたところオドが発見された。


オドはローズに怒られるのではないかとハラハラしながらが集落に戻ったが、ローズは無言で強くオドを抱きしめるだけだった。オドもされるがままに抱きしめられながら、今まで心にのしかかっていた何かが溶けていくような感覚に包まれていた。



◇ ◇



翌日以降、オドは早朝にコウと剣舞の型の稽古、その後に大鷲を仕留めるべく大星山を駆けまわるという生活を送った。それに加えて剣契の準備もあり忙しい日々ではあったがオドに以前のような焦燥感はなかった。


忙しい日々は早く過ぎるもので、オドの剣契の前日となった。


遂にオドが大鷲を仕留めることはできなかったが、オドは残念とは思いつつも、比較的落ち着いた心持ちで自分の剣契の儀式を待っていた。




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