#2-3




 笑い声と汗、そしてボールが飛び跳ねていた。

 ミアタナンの中央広場から北東、王城の近く。光導教の本拠である大聖堂、その中庭では球蹴り遊びが行われていた。全員が手を使わず、足と体、頭だけで相手の陣地の奥にある枠の中に蹴り入れる、というものだ。


「よぅし、ツッガ受け取れぃ!」

「あいよ法王さま!」


 前線で待っていたツッガ少年が、法王の蹴りだしたボールを胸で受け止めて、見事なキックで枠に入れた。歓声とため息が同時に響く。五点を先取した法王のチームの勝ちだった。子供が八人と大人がひとり(老人と呼んでも差し支えない年齢だ)、円陣を組んで勝利の雄たけびをあげる。


「まったく、法王さまは子供心をそのままお持ちでいらっしゃる様子だ」

「おでは、それ、いいことだと思いますで」

「私もそう思っておりますとも。七十近くになっても元気というのがなおいい」


 遊技場の外で、二人の男が話していた。

 一人は初夏の強い日差しの中でも白鋼の甲冑を着込んでいて、素顔を見せていなかったが、肩をすくめたり腕を組んだり、鱗に覆われた尻尾に体をもたれさせたりと、ヒトらしさを出していた。背中に結わえられた巨剣の重量をものともしてはいなかったが、思い出したように「暑いですなしかし」とつぶやく。

 もう一人はいかにも神官といった風体だった。巨漢の人間だが、落ち着きなくあたりを見回していて、どうにも頼りない印象を与えてしまっている。


「ふぅーいい汗かいた。テクーと隊長も次の一戦どうじゃ?」


 光る汗をぬぐうことなくそのままにして、実にいい笑顔で二人に近づいたのが、光導教の十四代法王、カル・アウストロスだ。

 運動用にとこしらえられた白い半袖シャツと短い紺のズボンで、すね毛の生えた足を大胆に露出させている姿は、運動が日課となっている街の老人そのものといった感じだった。


「法王さま。いつも口を酸っぱくして言わせていただいてますがね、威厳もへったくれもないですわ」鱗尻尾の、隊長と呼ばれた男が皮肉たっぷりに言った。「たとえば……せめて僧帽でもかぶっちゃいかがでしょうか。すぐに法王がやってるってわかりますぜ」


 法王はしかし、その案には悲しげに首を振った。大きな神官が差し出した水をうまそうに飲み、残りを頭からかける。


「おう、いかんぞそれは。以前それでやったんじゃがな、めちゃくちゃでかい帽子だったから、頭でボールを叩くのに便利すぎてなあ。子供たちにずるっこだ、いやずるじじいだってめちゃくちゃ怒られたから、禁止になっとる。この歳になって遊びからつまはじきされるのってな……つらいぞ」

「威厳がねぇことですな、法王」

「こちとら歴代でもっとも不良な法王って呼ばれとるわ」

「あ、あのっおじ上――」


 巨漢のテクーが言いかけたとき、それをかき消す大声で「じーさん、次はじまるよー!」と子供たちの呼びかけがあった。大男は困ったように笑ってから、どうぞという風に順番を譲った。すまんの、と肩を叩いて法王は再び戦場に舞い戻っていった。


「こっちもいつも思ってることではありますがね。甥御だからって遠慮せず、もっと押し通してもいいんでは、テクー殿?」


 彼らの視界の先で、子供たちは次の組決めを行っていた。法王は文字通り引っ張りだこで、腕や服が伸びても気にせず笑っている。その様子を眺めているテクーもよく似た表情をしているから、親子のように見えることもある二人だ。

 戦陣隊長が隣に目を向けると、テクー・アウストロスは僧服のあちこちをまさぐっていた。この巨漢には、一つのことをやっていると、他がまったく目に入らなくなる傾向がある。隊長の言葉も届いていないようだった。


「……なにをしてらっしゃるんで?」隊長は怪訝そうに聞いた。

「えと」胸ポケット、なし。背中、なし。「メモ書きです、おで、秘書だから。法王さまの運動がすんだら、つぎはどうするか、しっかり覚えておかないとで。とくに、もうすぐ光の日ですし。法皇さま、忙しくなります」


 なぜか腹の回りに三つもポケットが縫い付けてある、改造された僧服だ。右側のそこに目的のメモが入っていたらしく、食い入るようにして見つめていた。彼は近眼なのだ。


「ズボンの……ここ! あったぁ」

「よかったですな。メモをどこにしまったか、それを書きつけたメモが見つかって」

「んです。隊長の、えーと……」

「提案ですな」

「それです。そのおかげで、おでも、秘書がなんとかやれてます。ほんと助かってますです。ただ、その、悩みがあってで」

「私でよければ相談に乗りますぜ」

「メモをどこやったか、それを書いたメモをどこにしまったか。たまーに、忘れちまうんです」


 困ったように頭をかくテクーの顔立ちは、歳に似合わず幼く見えがちだ。男性的な魅力ではないが、年配を中心に好まれている温和さ。

 少し頭痛のしてきた戦陣隊長が、投げやりに言った。今日もいい天気だと思った。


「メモの場所を書いたメモをどこにしまったか、それを書いたメモを作るのはいかがでしょうかね」


 絶句といった感じで、ただでさえ濃い顔をさらに濃くして、テクーが口をぱくつかせていた。兜があるとはいえ、ここまで近づけないでほしいもんですな、と隊長は心の中でこっそり思った。純粋すぎる尊敬のまなざしは、隊長のちょっとすれた心によく刺さるのだ。


「隊長、天才すぎでは……!」

「よしてくださいませんかね、割と真剣になんですが」







 しっかりと休める場所など一つしか知らなかったので、オートは聖樹通りの事務所兼自宅に戻ってきた。

 背負ってきた女は最初布切れの軽さだったが、たどり着くころには厚手の絨毯の一巻きくらい重くなっていた。

 ただいま、と扉を後ろ手に閉めると。やる気のないおかえりが一つ帰ってきた。サヴィしかいなかった。


「出かけてくるって言ってたけど。どこまで行ってたんだー?」


 オートの方を見もせずに、クッションを家中から集めてしきつめたソファにべたっと寝そべったエルフが尋ねてきた。焼き菓子をかじりながらページをめくり(寝読書しながらのおやつはムゥに禁止されていたはずだ)、クッションに置いた足を交互にぱたつかせて(ホコリがばらまかれ掃除の手間が増えるのでムゥに以下略)、だらけるためにだらけているという具合だ。かつて決戦のとき、あれだけ格好よく駆けつけてくれたサーマヴィーユなる女性は死んだ。ここにいるのは、都会派エルフを名乗るぐーたらサヴィだ。


「本。菓子。足」

「面白い戯曲だからあとで読むといい。この噛みしめたときの蜂蜜の甘さはくせになるぞ。足は……ふふん、存分に、撫でつけるように見るといいぞー」


 月光にみがかれた肌と自負しているだけあって、傷ひとつない、白い脚線美をしていた。背負っているものさえなければ、いくらでも見ていたいくらいには眼福だった。

 いくら街に慣れたからとはいえ。ちょっと伸びてぐだっとした、芋の絵が中央に大きく刺繍された白いシャツ(気に入ったようで、普段着だ)に、薄いベージュ色の短パンだけといういでたちで、近くの店まで買い出しに行ってないだろうなと不安になる。

 二か月とちょっとの時の流れは、ヒトの内面の多様さを知るためには充分な期間だ。森を捨ててまで自分を貫いたサーマヴィーユには、浪費癖と、片づけ下手と、ずぼらなところがあった。それだけのことなのだ。


「こないだまで住んでたとこの近く。モーニと会ってきた、元気だったよ」言いながら、オートは赤毛の、魔術師らしき女をサヴィの反対側に寝かせる。「それよりクッション一つくれ」


 ようやくページから目を離して、見た目はいいエルフが彼を見た。半目がちな、にまついた笑顔で。家と生活をともにして、もと森の民のサーマヴィーユさんについてわかったことがいくつかある。


「体のどこにしいてたのがいいか。言ってみるといいぞ、ん?」

「本のとこ」


 クッションが後頭部に投げつけられた。

 ――からかってくる、というより年上のようにふるまってくるくせに、対応を誤るとすねるから。

 間違っても芋シャツの部分に当たっていたブツではないと、それだけは誓って言えるオートだ。投擲されたクッションはわりと容赦のない勢いだった。絶妙な力加減だったので痛くはなかったが。


「これが私の感じた痛みだぞー」


 そういうことらしかった。掟の多い暮らしから解き放たれて、できる範囲で自由を満喫しているエルフとやりとりするのは、記憶を失ってからの人生のなかでも抜きんでて楽しいことだった。


「オート、クッションを置いたのにどうしたんだ」サヴィが、なにをしているのか本当にわからないといった様子で聞いた。「そこ、座らないのか」

「座るって……」


 オートはソファを見た。まだ満足に言葉を交わしていない相手がそこにいる。顔色や体温はだいぶよくなっていたが、目を覚ます気配がない。

 肌は青白さから抜け出して、血の色を取り戻した薄ばら色になっていた。小柄な全身を眺めると、やはり服が――この街より格上の技術と未知の素材で作られた、原野の巫の衣装とでも呼ぶべき不明瞭なもの――目新しいというか、ひどく独創的だ。もっと単刀直入に言えば、ミアタナンの日常服と比べて露出が多い。肩もへそも出ている。

 弱っていると思しきヒトの上に無遠慮に座ったのであれば、ひとでなしのそしりは免れそうになかった。


「座れないだろ、これじゃ」

「なにを言ってる」


 サヴィが目をすがめた。それでは見えなかったらしく、とりあえず欲しいというだけの理由で買った(ムゥに怒られていた)、けっこう似合っている伊達眼鏡をかけてもう一度。


「いや――見えたぞ。眼鏡のおかげだな」自信満々に、エルフが言った。「そのクッション、私の髪の毛が一本ついてるぞ。それで照れちゃったのかー」

「うんそうなのぼくとっても恥ずかしいーじゃなくて。……赤い髪の女性が見えませんかね、サヴィ先生」


 否定。首をかしげるさまは愛嬌のあるものだったが。優越感よりも前に、己にしか見えていないことに由来するおぞけが走った。そんな彼を見て、サヴィは切り替えたようだった。芋シャツと眼鏡のまま。


「そこに誰か……なにかいるのか」

「ああ。変なかっこしたのが。たぶん魔術師じゃないかって思う」


 触ってみてくれとの要望に従って、オートは女の手を取った。そこに同居人が蔓草を伸ばす。エルフが好んで使う魔術のひとつだ。暗闇でおそるおそる確かめるように、彼の手がぺたぺたと触られる。生きた植物の、毛状のひっかかりを残す手触りが彼に伝えられた。女の手をすり抜けて。

 サヴィはさすがに怪訝そうな顔をして、直接触りに来た。タチアナ薔薇か、それとも裏庭の覇権を争っている植物群かは判然としなかったが、出会ったときと異なる香りが彼の鼻をくすぐった。

 そしてエルフの手はそのまま人間に触れた。


「オート」信じたいが、この現象が信じ切れないという目つき。

「本当にいるんだよ」

「魔術師だと言ったな。私にはムゥのように精緻さはないが、おおざっぱになら魔力を感じられるんだ。そこにはなにもないぞ」


 もう一度、眠っている女を見つめた。あどけなさの残る顔立ち。彼のそばには、きれいどころがすでに二人もいるが。そのどちらとも違う、隔絶したところにあるものを感じるのだ。

 親のように思っていた鼠から授けられた、心の中央にある言葉は、こんな状況でも揺らぐことはない。己がどうしたいのか、どう思うのか。


「それでも、ここにいるんだ」


 華奢な手を強く握ると反応があった。赤毛が目を開いていた。サヴィにもようやく見えたようで、一歩あとずさっていた。


「こんなことがあるのか」オートには感じ取れないなにかを見たのか、動揺が声に乗っていた。「魔力を感じないはずだぞ。これはそういうものじゃない」


 女は浮き上がっていた。床に足がついていない。オートが持ち上げている手には、なんの力も加わらないままにそうしていた。一度サヴィの方を見やり、それからオートに視線を合わせた。


「なあオート……この少女は、神と呼ばれるものじゃないだろうか?」

『あたしは空腹よ』


 エルフの言葉にかぶせるようにして、頭の中に声が響いた。二度目の経験だ。音ではなく、言葉ですらない。もっと原型的な、意志そのものをむりやり言葉という枠に押し込めた状態、それを体内に入れられて、その枠がほどけていくのに従って意味が読み取れるようになったような感覚だった。

 意が通じたことがわかったのか、女が笑みの形をつくった。何十年も、何百年も――それこそ生涯のすべてを費やして探し求めていたもの、それを見つけたとでもいうような興奮がそこにはあった。




『あたしは食事中だけど、あんたに言葉を授けてあげる。光栄に思いなさいな』

「……食べながら話すってさ」


 オートは頭に入ってくる意思を伝える役だった。対面に座した神(らしきもの)を見やり、サヴィは呆然とつぶやく。衆目をまるで気に留めることのない、一心不乱の食事だった。


「器用なことをしているぞ……というか、どれだけ入るんだ。私よりよほどちっちゃい体しているのに」そこでちょっと考える様子を見せてから、付け加えた。「言葉が通じているのか。名前は?」


 木々の間を飛び回り、高く跳ねるための体をしているエルフは、種族の傾向として、人間と同じくらいの平均身長と、痩せることを必要としない薄い肉付きを保つ。そこに属する娘がしみじみと言った。


『枯れ木みたいな体にちっこい洞が二つくっついただけのがよく言うわよ。クベルナであるあたしのこの姿態はね、肥沃な大地の精髄であり、実り豊かな黄金の秋のごとく見事な平野である、そうわかりなさい』


 一面の麦畑が広がっているのだとしても、生えそろっているなら、それは平らであると呼べるのではないだろうか――そう考えていたところ、『ふらちな意を向けるものじゃないわよ』という叱責が入った。考えてることが見抜かれてるのかと焦ったが、『これでも女のからだをしているのだから、直感くらい働くに決まってるでしょう』という補足。


「……あたしの体はぺったんこだけれど、それは豊穣な平野を表現しているのよ、だと。あと名前はクベルナ。大地の娘さんだってさ。サヴィは知ってるか?」

「いや、知らない神だぞ。森にまつわるものじゃない、こちらではラノルゲダ……死と再生によって実りを巡らせる者、という意を持つ名だ。空に輝く星にもそのような名前はなかったはずだ……にしても、神さまとやらは、ずいぶんと己の体について把握しているようであらせられる」


 意味が違うとの神意が頭をつついてくる一方で、サヴィが小馬鹿にした笑いを浮かべた。

 直接会話のできない、険悪な二国の王による会談があるのなら、その間を取り持つ苦労ってのはこんなものなんだろうか――オートの立場に同情してくれる者はここにはいない。


「どうしたんだ、オート」

「女ってこわいねって」

「ふふ。怖くない女がいるものか」サヴィが笑って言った。「でもこれ、ムゥが帰ってきたらぜったいに怒るぞ。私はいまあの子がいちばん怖い……」

「この家にあった食材ほとんど使っちゃったしな……」


 ふた月も経てば、家の中での権力者は決まるものだ。

 ここでは家計と家事を担うムゥが随一の発言権を有していた。当の奉仕機械が公正というより、あまり権力を振るいたがらない性質(自分は機械であり、使われるべき存在だと常日頃から主張している)だったので、残る二人もお気楽に暮らしていたが。ダメなことはダメだとはっきり言うのが不在にしている権力者だ。正論で押し出される未来がはっきりと見えていた。

 料理上手なムゥがいなければ、残っているのは、料理とはこれすなわち切って焼いて炒めることのみなオートと、肉と野菜をパンに挟むだけのサヴィだ。調理法もレパートリーも少なかったが、客はそのあたりにあまり頓着していないようだった。ひたすらに食べ、飲み、そして食べていた。

 秋菊と豚の炒め物からはじまり、家事担当のを見よう見まねで再現した、野菜を切って鳥肉と一緒にバゲットに挟んだもの、海鱒の塩焼き、そのままだとむせかえるくらいに甘ったるい果実のジュース。あまり金に余裕のある生活とは言えない三人だったが、食べることに関してだけはそれなり以上に豊かである。今晩はそれほど楽しい食事になりそうもなかったが。


『いただいたわ。ここでは馳走になったというのね。恵みを受けたこと、感謝しているから。少しだけ調子も戻ったみたい』


 すべてを食べつくしてから、クベルナ――女神なるものは右手を広げて食卓に突き出したあと、それを斜めに滑らせてから伏せる。異なる地における、食事後の礼なのだと察せられた。


「力がちょっとだけ満ちてきた、らしい」その言葉を信じるしかないあたりがつらいところだった。

「どのくらいなんだろうか」

『そうね、海に麦の種籾の一粒を放り込んだくらいかしら』

「おい。海に麦の種籾放り込んだくらいってお前。しょうがないでしょって言われてもなぁ……」

「オート。その話が本当なら、私たちはどうやらなめられているらしいぞ」

『これだけしか蓄えがなくてどうやって冬を乗り越えるつもりだったのやらね。けれども、そんな細々とした暮らしから蓄えを与える、その行いはとても誉れが高いことであると覚えておきなさい』思い出したように顔を上げて、オートを見つめる。『美味ではあったわ』

「真剣になめられてるなこれ。たぶん礼っぽいことも一緒に言ってるけど。おいしかったってさ」自分がやらねば話が進まないと判断して、隣に座る彼女に尋ねた。「んで、神さまって?」

「言葉通りだぞ。魔力の探知ではなにも引っかからなかったなら、まったく別の力が働いてるんじゃないかと考えたんだ。そのなかでなによりも傲慢なものをと探したら、それが思い浮かんだ」


 長耳が誇らしげに跳ねる。若く見られたい欲求と、年上らしくふるまいたい願望が混在したのが同居人であるこの女性だった。

 すぐにそれは消え、威嚇するように目つきを鋭くした。ソファの後ろに蔓草――多蛇草という、魔力に感応する性質を持つ植物だ――を器用に操って、察知されないように愛用の短弓を引き寄せている。その擦過音をかき消すように、会話が続いている間だけ動かして。

 警戒を怠らないというのであれば、オートの態度も、背後に目線をやったことも、悪手に違いなかった。

 ――そんな睨みつけるようにして監視しなきゃならない相手なのか?

 さきほどから思念を伝えられている彼には、そこまでの感覚はなかった。基本的に高飛車で、上からものを言ってはくるが、根っこには毒々しさがない。そのことをどうやってサヴィに伝えればいいのかはわからなかったが。


「でもこの人……こいつは、猫を出したぞ。それって魔術って呼べるものじゃないのか」

「お前にだけ見えてた理由はまだわからないけれど。あくまでも神だと言うのなら、それは御業だぞ」

「覚えたわ」


 御業という単語を受けてなのか。クベルナの、これまで食べるためにしか開いてこなかった口が、音のために使われた。隣のエルフにも聞こえたらしく、慎重に次の言葉を待っていた。




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