異世界の人類を滅ぼす方法を答えよ(配点100)

 ラストです。五十九冊目。ここまでたどり着きました。募る思いはございますが、それはあとで述べるとして。今は書評に全力で参ります。

 最後となりました小説は、忠臣蔵さま著「異世界の人類を滅ぼす方法を答えよ(配点100)」です。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885333901


【あらすじ】

 大春二三は殺された。何故、どうして、そういったものが不可解なままに。気づけばそこは天国、黄泉の国……などではなく、獣にしか見えない外見の民たちが統べる魔界だった。人間のカーストは最下層。奴隷としていきるか、餌になって売り飛ばされるか?二三はライオンに似た容姿をした王子様の「家庭教師」として、人類を滅ぼすための教育を王子に施すことになるのだった。


【魅力】

 けもけもしい魔界の住人たち。彼らに支配され、序列において最下層にあり、文明というものも知らない人間。このカーストが成り立っている世界観が魅力に思えます。どうして人間が最下層なのか?現代の我々ですと納得できないような感覚ですが、文明レベルや知能を丁寧に描いていますので、独自の「異世界」としての世界観がきっちりと構築されています。突飛に思える冒頭とは裏腹に、事細かに順を追っていく描き方がいい意味でギャップとなっています。


【改善点】

 異世界ファンタジーにおいて難しいのは、現代社会と「違う」ことをどうやって理論付けるか、納得させるかです。魔法が発達している世界において、何でもできるならば科学が発展する余地はないように思えます。その「何故」に明確な答えを与える。世界観の構築としては必要な作業でしょう。

 さて今作ですが、場面ごとのウェイト、そして中弛みが陥りやすい展開であるように感じます。展開、というよりも文章量が多いため、でしょうか。冒頭のショッキングな掴みはいいとして、それ以降の「どうしてこうなった」が丁寧すぎるあまり、冗長になる恐れがあります。具体的に言うと、ヴォーダンの独白の章は三話割かれていますが、本筋に戻るまでにはやや長すぎるように感じます。あらすじが見えてこないと読者は不安になりやすいので、シナリオの線を際立たせるための装飾バランスが求められるように感じました。

 あと、こちらは蛇足ですが、語彙の多寡が顕著であるように感じます。冒頭など、ルビが必要な難しい言葉が並ぶ反面、主人公がツッコミをいれて進む基本的なシナリオに、語彙のギャップを感じずにはいられませんでした。悪い、という意味ではないのですが。


【その他】

 獣人の話も、この書評企画で読んだことがありましたね。なかなか獣人の話は趣味嗜好がありますので多くはないジャンルだとは思うのですが、私が読まないだけですかね。獣人が出てきたときに気になるのは文明のレベルです。もし人間ではなく獣が支配する世界ならば、どう変質していたのか?そんなifを垣間見れて興味深いです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る