スタート・オーバー

 五十八冊目です。今回書評させて頂くのは化茶ぬきさま著「スタート・オーバー」になります。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885978329

 この書評、企画から2ヶ月以上経ってるんですけど、その間にペンネームが変わってらしたみたいで。時の流れって残酷だなあ……有澤の行動力が悔やまれる。


【あらすじ】

 春秋繰は繰り返す。とある一日、本来であれば殺されていたはずの一日を。幼馴染の華と登校して、友人に詰られて、平凡な毎日のはずだった。しかし高校に「日本の夜明け」を自称する部隊が突入、理解しがたい殺戮と立てこもりを行う。彼らの真意は?なぜこの高校に?警察も出動する緊迫した事態。どこかで選択肢を間違えたのか、犯人グループによってその命を奪われたはずの繰は……目が覚めると、同じ朝を迎えていた。


【魅力】

 タイムリープもの。繰り返す運命の日をどうやって抜け出すか、その試行錯誤のプロセスが見所です。同じ日を繰り返すことで見えてくる情報があり、それに先手を打つために行動を変える、と展開が変わってくる。序盤は仮説を確かめるような微細な変化だったものが、ループを重ねるにつれて主人公の行動も大胆になっていく。変わらない現状と変わっていくキャラクターの対比がタイムリープという題材を生かした魅力と言えるのではないでしょうか。


【改善点】

 同じ場面を繰り返していくものを描く上でポイントとなるのは、いかに読者を飽きさせないかと考えます。後述しますが涼宮ハルヒの「エンドレス・エイト」などはその最たる例で、まったく同じものを延々と見せられるのって、苦痛に変換されてしまうことがあります。もちろん、微細な変化に気づいてほしいという意図はあるでしょうが、あくまでエンターテイメントという観点で。

 一回目のループに至るまでの「モデルケース」は、もう少し新鮮味のある描き方をされてもいいのかなと思いました。部隊の襲撃、教師の惨殺、どれをとっても平凡な高校生である操にははじめての経験です。ループする以前からその惨状に対して冷静すぎるほど適応しており、二回目以降のループが「当たり前」に感じてしまいました。主人公は特殊能力があるわけでもなく、戦闘経験がある描写も今のところ見受けられません。その割には非日常に慣れすぎているので、何故冷静に対処できているのか、他の生徒のように拒否反応を示したり、惨状に吐いたりしないのか。一人称小説ですので、主人公の心情についてもっと掘り下げても問題ないように感じました。


【その他】

 タイムリープものと言えば、やはり時をかける少女に触れないわけにはいきません。金字塔的な存在ですよね。私、涼宮ハルヒは詳しくないのですが、エンドレス・エイトもタイムリープなんですかね。同じ出来事の繰り返し。自分だけがそれに気づいて、他は同じ行動を繰り返している。そのなかで自分にできることは?未来は変えていいものか?答えのでない究極命題にも思えます。

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