黄昏のフリージア ‐堕ちた天才錬魔師の英雄譚‐
五十三?五十四?五十四冊目ですって。御子柴奈々さま著「黄昏のフリージア ‐堕ちた天才錬魔師の英雄譚‐」を書評させて頂きます。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054882426358
相変わらず体調が戻らず、多方面の活動が停滞気味です。コメントのお返しなどはパソコンを起動できるくらい体調が回復しましたら、改めてさせてください。申し訳ありません。
【あらすじ】
枯れた魔術師――ウィザード。前時代の堕ちた英雄、それが若きリリィー・ホワイトへの世間からのレッテルだった。侮蔑と嘲笑を込められたあだ名を払拭できない、何故なら彼はある戦争を境に力を失ってしまったのだから。最早枯れて腐るだけ。それでも捨てきれないものにすがるべく、彼は王立錬魔術学院の門を叩いた。
【魅力】
しっかりとした設定。世界観というよりは、錬魔術に関する理論、組み立て、そういった論理的な設定がしっかりしていると言うべきでしょうか。その方が正確かもしれません。ファンタジーにおいて、核となる「魔法」に類するモノ。今作は魔法ではありませんが、そのオリジナルの術式をどこまで掘り下げられるか。それで物語に安定感が生まれてます。設定など凝ったものがお好きな方にオススメしたいですね。
【改善点】
少年漫画のような熱い展開がお好きな方が、叫びにはドラマがあるのだと熱弁をふるっていました。ただ叫ぶのでは意味がなく価値も下がる。絶叫に至るまでの紆余曲折、ドラマ、感情、そういったものを経ての「シャウト」なのだと。
今作で気になったのは、感情の高まりである叫びの使い方です。「うおおおおおおおッ!!!!」男の咆哮、魂の叫びだとわかります。ただ、ことバトルの場面においてはこの叫びが使われ過ぎているのではないか、表現がマンネリにならないか?いわゆる「叫びの価値」が下がってしまうのではないか、と感じました。
元々「!」の使用個数が多いので常に絶叫している印象がある上に、言語を捨てて咆哮するわけです。確かに感情の昂りを表現するのに叫びはお手軽ですが、その重みも踏まえた描写があるとよりドラマが厚くなるかなと感じました。リリィーが悔しさを抱きつつも足掻く姿、その果てに出てきた魂の絶叫を、山場としてより価値ある描き方をすると魅力が増すのではないかと思います。
【その他】
ドイツ語をモチーフとした用語が頻繁に出てくるのですが、ドイツ語って強いですよね。語尾が強い。発音の語気も強い。ついでになんてことない言葉も強い。以前の書評を引きずっていますが、「バウムクーヘン」とかもそれっぽく叫んだら必殺技っぽい圧を放ちそうですよね。そんなことない?
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