滅びゆく世界のキャタズノアール

 五十です。最後の大台となりました。この書評を始めた時からは想像もしていなかった数字です。お付き合いくださる皆様に感謝を。

 記念すべき五十冊目の書評は、斉藤タミヤさま著「滅びゆく世界のキャタズノアール」です。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884285421


【あらすじ】

 災厄をもたらす凶星=キャタズノアールは、一定の周期でこの世界に接近する。そして凶星に吸い寄せられるかのように黒い霧が世界を覆い、魔物を産み出していく――王から凶星と黒い霧の調査について命を受けたアラケアは、黒い霧を使った企みに気づく。真相を究明すべくアラケアは因縁あるカルギデを追い、背後に蠢く凶星の陰謀劇に踏み込むことになる。


【魅力】

 頭をガツンと殴られるような重厚さ。ダーティな雰囲気がなお魅力的です。開幕のシーンから衝撃の展開ですが、あのシーンを冒頭にすることで物語の「色づけ」がしっかりできているのだと思います。方向性にブレがなく、雰囲気が壊れることもない。そこからの奥義の打ち合いとなる豪快なバトルが、また意外性があります。


【改善点】

 ゲームを見ているような心地でした。ノベルゲームではなくて、RPGのテキストを追いかけているような感覚、でしょうか。ゲームのシナリオを執筆されている方のお話を聞く機会がありまして、ゲームテキストの事例をご紹介いただいたのですが、今回読んだ小説はまさしくそんな感覚を抱きました。

 踏み込んで述べるのならば、「絵」があれば理解が深まる文、と言うべきしょうか。奥義、キャラクター、世界、いずれもきっと彩り豊かなものであるかと思います。しかし印象に残るのは「奥義を叫んだ」「キャラクターが出てきた」という事実であり、奥義がどんなスケールの技か?キャラクターはどういった容姿か?ビジュアル面の認識が薄れてしまいました。キャラクターのセリフの間に言動を挟むことも少ないため、RPGのテキストスクロールを見ているかのような感覚に陥る危険性があります。重厚な雰囲気を最大限生かすためにも、世界観設定やキャラクター、技にも「重み」を持たせた描写を取り入れても問題ないのでは、と思います。


【その他】

 ゲームシナリオのノベライズを読んだことがあるのですが、作者さまによってテイストが違いますね。玉石混淆というべきか。単に「うおおおおおッ!!」と叫んで技を打ち合うだけ、技の中身は読者の想像にお任せ、というのはあまりにもあんまりだと感じました。あれ以来RPGのノベライズは買ってないですね。

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