Travelers・Link

 四十九冊目に突入です。終わり、見えてきた。書評させて頂いたのはミカヅキさま著「Travelers・Link」です。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885514825


【あらすじ】

 山田純、中学二年生。剣道をやってたくらいの平凡な女子。平凡を描いたような彼女はある日突然、なんの前触れもなく、マンホールから異世界に落っこちた。純が生きる世界に似た地形の異世界、でも知らない横文字と宝石魔法で成り立つ世界。転移した先で出会った少年レオンとともに、純はこの世界の謎を解き明かす旅に出る。


【魅力】

 キャラクターの個性がまず押し出された小説です。みんな大好き七つの大罪。目を引く髪色をしたレオンに明るいがすぎるアカザ、でも一番アクが強くキーマンとなりそうなのがハザマ。名前を挙げるだけでも相当濃いメンツが織り成す物語だとわかります。そういったキャラクター同士の軽妙な掛け合い、個人の掘り下げ、人間としての成長がお好きな方と相性がいいと思います。


【改善点】

 一人称が多めに含まれた三人称小説、という印象でしょうか。作者さまがこの小説は三人称であり、時折心の声として純の一人称が入ると述べてらっしゃいますが、それにしても一人称の割合が多いかなと感じました。一人称を否定したいのではなく、メタっぽい思考や地の文で「ざまあ」と言ってみたり、段落いくつかずっと一人称だったりしたので、読者には読みにくく受け取られかねない、と感じた次第です。モノローグであればダッシュを用いて三人称の地の文と明確な住みわけをした方が、この小説だと親切かもしれません。

 あとは世界観でしょうか。現代に近いけど生活水準や成立過程はまったく違うもの。宝石魔法が発達して家電はないけれど電気は存在して電車がある。この辺の「世界としての風景」が、想像しにくかったです。キャラクターの輪郭ばかりが際立ち、ぼんやりとしたバックを歩いているといいましょうか。魔法が便利で家電が発達しないなら何故大きな鉄箱である電車があるのか(魔法があるのに電気だって実用レベルで存在している。外見は蒸気機関車なのに)、とか水準が気になりました。


【その他】

 カクヨムで書評企画をさせてもらってもうすぐ五十冊ですけど、なんとなーく皆さんが取り入れたがる要素が見えてきました。魔法。バトル。ナンバリング。序列。異世界。属性。わかります、そういうカテゴリ使いたいのわかります。七つの大罪とか、もう性癖ですよね。倫理を学んだ人間としては美徳の方は扱わないのかな、と思ったりしますが。

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