星降る村の小さな英雄

 四十七冊目、になりました。今回書評させて頂くのは南木さま著「星降る村の小さな英雄」です。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885366173

 作者さまはキャラクターがカクヨム内の小説をおすすめする企画も行っておりまして、そちらも楽しく拝見させて頂いております。ではでは、気を引き締めて参りましょう。


【あらすじ】

 標高4000メートルという高山地帯、まさに人がほとんど立ち入ることのない聖域に集落をなす一族があった。「山の民」と呼ばれる彼らは守護の神樹を崇め、日々を過ごしていた。少年アグニも山の民として生まれ、屈強な父とともに狩猟などをして生活をしている。竜人と呼ばれるヴェルとしのぎを削り、父と山を巡回し、アグニは充足した毎日を送っていた。守護の神樹が暴走し、とある出会いを果たすまでは。


【魅力】

 山の民の生活を丁寧に描いた小説だと思います。ハイファンタジーにおいてどのように世界観を伝えていくかは読みやすさとのせめぎあいがあります。この世にはどんな種族がいて、人間との関係はこうで、魔物がいて……というバトルに関するものはよく書かれますが、今作はそれだけではなく、複数視点からアプローチしています。装備の質もどんな素材を使っているかで文明のレベルが見えるほか、食事で何を主食とするのかがわかります。こういったことは疎かにしてしまいがちですが、集落を中心とした世界観だからこそ掘り下げが効果的なのだと思います。


【改善点】

 通読して感じたのは、読んでいて印象に残るシーンがなかったな、ということです。魅力がないという意味ではなく、文章がとてもサラサラしていて、流れていくといいましょうか。サラサラすぎて印象に残らないと言うべきか。序章は気にならなかったのですが、特に第一章以降、地の文が説明的で文体が気になるためかもしれません。

 展開自体は衝撃的です。神樹と思っていたモノの暴走などは村の存亡に関わる壮大なスケールの大事件でしょう。しかし、誰が何をした、という事実が地の文でつらつらと綴られているため、どうにも流れてしまう。テンションの上がり下がりが文章から見えにくいためかと推察されます。特に後半は貨幣、猟騎士を雇うためのシステムといった機能面の情報が多く、説明が必要とはいえあまりにも事務的に感じました。「~について説明しよう」というような語り口も、堅苦しさや淡白さに関わっているかもしれません。表記につきましては、登場人物が多いことも踏まえて、あまりとっつきにくくならない文体だと読みやすいかなと感じました。


【その他】

 竜人、という種族が今作にでてきますが、皆さんはドラゴンというとどんなものを連想するのでしょうか。東洋的な龍よりも西洋の竜はどことなく門番というか、こっちのほうがパワーがあって気性が荒いイメージです。RPGの影響でしょうか。

 終わりに、このたびは書評させて頂きましてありがとうございました。

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