銀色世界

 四十六冊目、西井ゆんさま著「銀色世界」。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885436345

 こちらが今回書評する小説になります。タイトルが綺麗ですね。ではでは、参ります。


【あらすじ】

「夏と冬ならどっちが好き?」なんてことない、無意味な質問だ。話題の種にしかならない。けれど「僕」こと純也と大地の間に交わされたどうしようもない雑談が、とてつもなく重要な会話だった。とある出来事がきっかけでまったく口をきかなくなっていた二人が会話する。二人の仲直りを画策していた幼馴染みの渚沙も関係修復に躍起になるが……何気ない会話ひとつでは無価値なほど、彼らの間に横たわる「過去」は肥大化していた。


【魅力】

 ミステリアス。読めば読むほどに深まっていく謎が気持ち悪さを誘います。気持ち悪い、これ、褒め言葉です。誰が何と言おうと褒め言葉です。あらすじがそもそも不穏で、中身を実際に読んでみても横たわっている嫌悪感があって、表層は平和そうなのにバックボーンにどうしようもない溝がある関係性がたまらないです。


【改善点】

 ジャンルわけの難しい小説です。現代ドラマ、どろどろした人間関係、そこにあるのは恋愛模様?カテゴライズがすべてではないですが、これはこれこれこういう小説ですと一言では表現しづらいものがあります。複雑な小説です。

 謎は後に引っ張る魅力にもなりますし、道のりを理解できずに引き返す足枷にもなり得ます。今回は半々かなあと個人的に思います。この小説は平穏に見えてちぐはぐな人間関係が中心です。どこまで踏み込み、どこまで打算で馴れ合っているのか。

 純也と大地の殴りあいからの「仲直り」は、どんな関係で妥協した結果なのか、そのラインが見えにくかったです。致命的なすれ違いがある以上、殴りあった程度で完全に仲が修復できるとは思えません。しかし、殴りあった後の詳細は割愛され、「仲直りした」という記載だけが残っている。二人がどのラインにとどまっているのかがわからないと、この先二人は腹の探りあいをするのか本当の笑顔で接するのかが見えなくなってしまいます。過去をすべてひけらかしてほしいわけではありませんが、関係性がどこまで進展しているのかはわからないと、読者が置いてきぼりをくらうかもしれません。


【その他】

 どろどろ愛憎劇、人間関係。好きです。昼ドラが好きな訳じゃないんですよこういうと趣味嗜好厄介そうだなーと思われるかとそうです厄介です私。吐き気を催すほどの嫌悪感!笑顔を張り付けた裏での騙しあい!ハァーたまらん!少年少女の汚泥みたいな青春がみたい(ひどい)!

 暴言が過ぎましたね、失礼しました。このたびは書評企画にご参加頂きまして、ありがとうございました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る