グリムハンズ
四十五冊目。今回は、なはこさま著「グリムハンズ」を書評させて頂きます。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054883788890
【あらすじ】
童話から派生した異能力を持つ者、その通称はグリムハンズ。ワードと呼ばれるこの世ならざるものを倒すべく、グリムハンズである如月正太郎は日夜奮闘していた。教師として勤める高校にもグリムハンズの素質を持つ生徒達がいる。厭世的で他者との関わりを嫌う少女・沙月エリカもそうだった。グリムハンズの隠れ蓑である「童話研究会」を拠点に、如月はじめとするグリムハンズはワードとの戦いに臨む。
【魅力】
とても整然とした小説です。使うべき言葉を洗練し、シンプルに仕上げていく。童話をモチーフとしたグリムハンズ、影のあるバックボーンを背負ったキャラクター、そこからの非日常との戦い。どれも納得できるクオリティであり、大きな粗もない。安定感のある作品だと思います。というと何様だ、という話になってしまいますが、読み進めるにあたって「この作者さまなら安心してページをめくれる」というクオリティへの信頼は大切だと、私は考えます。
【改善点】
各章を読み終わったあと、私の中に残ったのは「あっさり感」でした。展開としてはグリムハンズとしての少年少女のバトルが描かれているのに、何故か思ったほど熱くなれない。その一因は文章が説明的すぎるせいかもしれません。
顕著なのは二章の亀城の過去です。亀城にはどんなトラウマがあって、どんなグリムハンズで、何ができるのか。そのすべてを如月が説明している。地の文に感情の吐露があり、叙情的な部分もあるはずなのに、そういったシナリオに関わる部分が第三者に説明されているため、読者としてはキャラクターに共感しにくいのだと思われます。
グリムハンズについて世界観も知識もない私たち読者に対し、説明をすることはもちろん必要です。ですが、キャラクターのパーソナルなど、感情を剥き出しにした方がいい部分まで客観視しなくてもいいように思われます。誰の口から語らせるか?口述と伝聞では受け止め方が変わります。より印象的に、インパクトを残したいものなどは同じ中身でも台詞にするか伝承にするか地の文にするかで変わるのではないでしょうか。
【その他】
童話は本当は怖いのだけど、児童向けに改編されているのだ、という話はよく聞きますね。本当は怖いグリム童話、みたいな本を読んだことがあるのですが、たとえば「シンデレラ」の意地悪な継母は焼けた靴を履いて死ぬまで踊り、后となったシンデレラに嘲笑されたとか。とんだブラックユーモアですね、とてもお子さんに読み聞かせできるものじゃなかったです。それはそれで読みたいですけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます