儚き永遠のビーストランド

 では四十四冊目。今回書評させて頂きますのは千石一郎さま著「儚き永遠のビーストランド」です。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885626749


【あらすじ】

 エスティは戦災孤児である。身寄りもなく、食っていくためには大学を出ていい就職先を見つける必要がある。そのために「特騎クラス」という、国家公認の殺戮兵器・ドレスビーストを操縦して戦争に身を投じるクラスへの編入を余儀なくされた。成績は最下位、クラスメイトからの嘲笑に耐える日々。確かな戦績をあげなければ除籍。綱渡りを続けるエスティの日常は、「黒騎士」と呼ばれる強力なドレスビーストの襲撃を皮切りに少しずつ変わり始めていく。


【魅力】

 尻上がりに引き込まれていく小説です。後半に行くほどに面白くなる、その魅力に取りつかれる。おそらく、キャラクターの人間関係や人となりが見えてくるからだと思います。国家が言わば公認した兵器に搭乗して、戦争を仕掛ける子供達。その構図がそもそもいびつですが、戦いに身を投じるなかで少年少女の等身大の感情が剥き出しになっていく。その魂の叫びがたまりません。搭乗するドレスビーストが、搭乗者の感情によって制御できなくなるというのも興味深い設定です。


【改善点】

 キャラクターを理解できるとその魅力を存分に堪能できるのですが、序盤の展開はやや性急、というより描写不足であるため戸惑う部分があるかもしれません。

 ロボット物で気になるのは、搭乗するマシンの外見や戦闘スタイルの特徴です。ドレス「ビースト」というだけあって四足歩行をしたり、荒々しい戦い方を見せていくのですが、そのあたりの情報開示は早いうちにするといいかなと。第一話から何種類かのドレスビーストが出てきますが、それぞれどんな特徴があるのか理解がおいつきませんでした。ファーストインプレッションは大切ですし、ページをめくるかどうかにも関わってきます。読み込むほどに魅了される題材であるぶん、序盤は緻密に描写をして世界観やドレスビーストの戦闘を効果的に描くとより掴みが良くなるかなと感じました。


【その他】

 きちんと見たロボットアニメ、最初の出会いは(リアタイしたものは)ゾイドかもしれません。懐かしいですねゾイド。流行ってました。私はプラモデル作ったりとか、そういった手先の器用な趣味はできなかったのですが、四足歩行するロボットが戦う、というアニメに鮮烈な印象を受けたのを覚えています。

 最後に、このたびは企画にご参加頂きまして、ありがとうございました。参考になれば幸いです。

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