鬼に恋しや
前回もみなさまのご意見、ご感想、ありがとうございました。私の創作に関する雑談がなんだか多くの方に目に留めて頂いているようで、ありがたくも気恥ずかしかったり。偉そうなこと言ってないといいですが。
では気持ちも切り替えまして後半戦、三十一冊目になります。野沢 響さま著「鬼に恋しや」です。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054883724773
【あらすじ】
瀬野通成は第二次世界大戦に徴兵され、どうにか生存して故郷の土を踏むことになった。終戦後、意気消沈とする故郷への道程。戦友の遺品を遺族へと届けるため歩く道すがら、山中で賊に襲われてしまう。疲労困憊の瀬野を救ってくれたのは、銀の髪に赤い目、そして異形の角を生やした「鬼」の少女だった。
【魅力】
美しい。見目ではなくて、ありようが。瀬野と凛の育んでいく関係が。清くて美しく感じるのです。二人と社会の間に横たわる鬼への畏怖がありながらも、二人で生きていくために画策する瀬野。そんな彼に答えようと自らの恐怖心と戦う凛。けっして派手な物語ではありませんが、ストーリーの軸がしっかりとしているぶん、最後まで読者を飽きさせない構成になっていると思います。
【改善点】
繊細で美しい物語なのですが、感情の機微というべきか、心情の移り変わりに関してやや描写があっさりと感じてしまう部分がありました。心理描写のウェイトが私(読み手)と作者さまとで少し異なっていたようです。
具体的には、弟に鬼であることがバレて凛が家を飛び出したあと、瀬野との和解のシーンです。瀬野に呼び止められるまでの葛藤はとても丁寧に描かれているのに、瀬野が「戻ろう」と言ったらいくつか話してすぐに頷いていました。そこまでの丁寧な心理描写、悩みが嘘のように「はい戻ります」と言うものですから、拍子抜けしました。
感情→出来事→感情の変化、が基本的な流れでしょうが、出来事を通しての感情の変化が流れてしまっているように感じます。せっかく前半で苦悩や葛藤がよく伝わるぶん惜しく思ってしまいます。心情の変化は「なぜ心境に変化があったのか」を、出来事を通してより丁寧に描いてあげても問題ないかと思われます。
【その他】
恋愛小説って、一言に言っても醸し出す雰囲気がどれも違うんですよね。有川浩先生の「植物図鑑」は、恋愛小説と分類されますがなんというか、恋愛小説という感覚で読まなかったというか。確かに前半はリア充爆発しろと叫びたくなるのですが。「恋愛」に対するイメージがラブコメなのか、純愛なのか、ケータイ小説なのか、ロマンスなのかでもきっと受け取り方が変わるのでしょう。
最後になりましたが、企画にご参加頂きましてありがとうございました。好き勝手語らせて頂きましたが、何かの参考になればこの上なき喜びです。
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