アンノウン ‐unknow‐

 二十九冊目です。パンのみみさま著「アンノウン ‐unknow‐」。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885503132

 私が書評を始める前に、拝読させていただいていた小説です。では慎んで書評、させて頂きます。


【あらすじ】

 プラス学園は「魔法」の才能を見出だされた存在が集められる学園である。なかでもSクラスと呼ばれる学級は桁違いの才能と戦闘能力を誇る。ゆえに国の軍部から特命として異形の存在を刈り取るミッションが下されるのだ。吸血鬼、転生した偉人、その他未知の人間を超えた存在に、少年少女は命を賭して戦う。


【魅力】

 かっこいい。第一印象です。戦闘シーンがかっこいい。現代を生きる少年少女が、吸血鬼やかつての偉人と張り合う。知名度や経験において大きな差があるのに、まるで過去を超えていくようなバトルの構図が魅力的です。学園のキャラクターも前線特化だけではなく、諜報戦に長けている子やらがいて、そのなかでも人間らしい感情のぶつかり合いがある。人間臭い部分が見られるのもいいです。


【改善点】

 この小説は群像劇バトルだと思いました。神之瑪(が主人公で大丈夫でしょうか)に常に焦点を当てるのではなく、不気味なほど「普通」な嗣音、人形の胡蝶といった学園側の人間(?)だけではなく、戦う転生者視点の話もどんどん盛り込んでいく。多角的な群像劇だからこそ、どのキャラクターにも理解がおよぶのでしょう。

 そのぶん、かっこよさだけでは相殺できない展開のわかりにくさが横たわっています。視点が変わるということは「一方その頃」を繰り返すことを意味していますので、ボリュームのあるバトルを楽しめるぶん、シナリオとしての繋がりが希薄になってしまいます。かといって視点の転換を減らすと、群像劇としての魅力が大幅に減ってしまう。難しい書き方を求められていると感じました。

 煩雑になってしまう「視点」を、どうやって「流れ」にしていくか。「点」が「線」になったときの明瞭さが群像劇の面白さだと思いますので、各章のキャラクターの動きがどんな結末に絡んでいくのか?用語の難しさ、情報量の多さ、キャラクターの多用さと今作は色んな「難しい」を絡めて描かれていますので、たとえば「このシーンでは新しいキャラクターを出さずに、用語の理解を戦闘シーンを用いて努める」など、複雑さのレベルを使い分けて「難しいけど理解できる」お話になるとより魅力的になるのかなと感じました。


【その他】

 なんでこの小説のタイトルはunknownではなくunknowなんだろう?と気になって読み始めたのを覚えています。思えば私の知識不足のせいなんですけどね。なるほど動詞。あとは完全に個人的な事前知識のせいで申し訳ないのですが、偉人をモチーフにしたバトルは他の複数タイトルのイメージが先行してしまうため、有名であるほどに難しいなと感じました。読者の都合ですが。

 最後になりましたが、このたびは企画にご参加頂きましてまことにありがとうございました。

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