魔界大陸の鉄道王《レイル・ロード》

 二十五作目。折り返しまでもうちょっと!私事ですがお仕事の方が秋口からちょっとわたわたしそうなので、一夏の思い出()ということでなんとか夏の間に感想を完走したいと思っています。

 今回書評をさせて頂くのは秋桜かをすさま著「魔界大陸の鉄道王 《レイル・ロード》」です。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885983197


【あらすじ】

 魔王ローゼリアは大陸を横断する鉄道の敷設計画を立てた。必要なものは鉄道を建設する能力を持つ外部の人間。莫大な魔力を注ぎ込み、ローゼリアは召喚を行い――その結果、ちょっとだけ知識がある御縁クガネが異世界転移した。知識はあっても具体的な建設経験者はナシ。前途多難な滑り出しとなった鉄道計画は実を結ぶのか。


【魅力】

 キャラクターがハイテンションで終始笑いっぱなし。そんな印象を受けました。ふざけたり、突っ込んだり、絶叫したり、リア充めいたモノローグから物語が始まったり。そういったブッ飛んだテンションで語られる物語って、自己満足や内輪で楽しんで終わってしまうことがあります。でも今作は、キャラクター達があっちこっち縦横無尽好き放題暴れまわってるのに、ストレスなく楽しめる。興味深い魅力です。地の文にしっかりとした基盤があるのを感じさせるから、でしょうか。


【改善点】

 語り口をいじると、この小説の良さを殺しかねない。かといって文章の方にケチをつける箇所も見当たらず……シナリオに抵触しないとは思うのですが、この世界での「知識」に関して気になることがあったので、その話をさせて頂きます。

 魔王ローゼリアはその権能によって外部の世界の知識を「知っている」とあります。では、他の国民はどうなのでしょうか。この小説の登場人物は大方ローゼリアの方策に賛成し、理解し、協力を惜しまない様子です。ただ、蒸気機関というものを実際に見たことのない彼らにどの程度の知識があるのか?それを理解・浸透させるためにローゼリアはどんな対策を行ったのか?電気やガスはなく、未だに馬車が走る世界観というのは理解できておりました。その辺りの国の文明レベルといいますか、魔術が発達した国には何があって何がないのか、特徴を知りたいなと思いました。そこが見えると見えないとでは、ローゼリアが鉄道を敷設することに異論がない理由が見えにくいかと思われます。


【その他】

 長距離の鉄道、というと私はシベリア鉄道を思い起こします。大陸をレールひとつで走って、端っこから別の端っこまで旅をする。飛行機で行けばあっという間の旅路ですが、各駅停車の地面を走る列車だからこその醍醐味がある。地に足つけて大陸を渡ったんだ、という達成感でしょうか。今回の鉄道もそんなイメージで読ませて頂きました。

 あと余談ですがレイル「ロード」ってroadとlordを掛けてるんですかね?と閃いた瞬間テンション上がりました。

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