正義の味方と僕
二十三冊目です。大臣さま著「正義の味方と僕」。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885906058
では慎んで書評、させて頂きます。
【あらすじ】
星川響という少女の話をしよう。正義の味方であろうとした、信念を持った少女の話だ。「僕」こと浅川祥は誰も起きていない朝方にそれを書く。世間が覆い隠してしまった星川響の真実を、したためて後世に残すために。学校で常態化したいじめ、カースト。そういった堕落した世界を星川響は改革しようとする。
【魅力】
今時、というとあれですが、正義感を迷いなく振りかざすことが出来る人ってそうそういないです。正義とは何か、自分がやろうとしていることは本当に正しいのか。そういった悩みや、あるいはキレイゴトだけでやっていけないと嘆くはずです。しかし星川響はぶれないし、熱い。彼女の眩しいほどの正義が光るお話だと思います。この先彼女の正義は翳るのか、貫くのか。正義というものの行く末が気になる小説です。
【改善点】
腐敗した学級。腐敗とはどんな状態か。いじめは悲しいことに現代日本では「日常」だし、それを扱う以上繊細な配慮と納得いく解決策を提示しなければ、中途半端な話に終わってしまう。個人的な所感がはいり恐縮ですが、難しい題材だと思うのです。
作者さまは物語がどこか平坦としており、それが悩みだとおっしゃっていましたが、題材に対し情報量が少ないというか、もっと背景が見えるとよりストーリーを理解できるのかなと思います。
この物語を理解するには、学級での勢力、人間関係、問題の提示が必要です。「このクラスを牛耳る人間がいる」らしいですが、本編からはそういった不穏さが見えてこない。歯向かった人はどんな扱いを受けているのか?一人の気まぐれで誰かが標的にされ、いじめに類する扱いを受けていないか?それがなければ「牛耳る」という状況は見えてこず、このクラスに問題があるとも思えなくなってしまいます。星川が義憤に駆られたのはクラスのどんな状況を実際に見たからなのか?彼女の動機が鮮明になると、彼女が正義を振りかざす理由も理解しやすいと思われます。
【その他】
衝撃的な書き出し、で思い出したのは、桜庭一樹先生の「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」です。私がはじめて読んだ桜庭先生の本でした。来るべき結末に向けて着実に進んでいく物語。エンディングが見えている小説というのは途中のプロセスをいかに魅せるかがポイントとなりますが、今回書評させて頂いた小説にも似た思いを抱きました。ただ、「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」はハッピーエンドが好きな方にはこう、おすすめできないのであれなんですけど。私は好きです。
最後に、このたびは書評させて頂きましてありがとうございました。
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