銃と火薬とアイスクリームと

 前回も、私の思ったことにいろいろな反応を頂きまして、まことにありがとうございました。私の創作物について宣伝することはありません。が、書評させて頂いた小説に興味をもって頂けると何よりです。それが本来の書評でしょうから。

 二十一冊目。クロさま著「銃と火薬とアイスクリームと」です。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885257713


【あらすじ】

 佐々木白夜の家庭は半分崩壊しており、学校ではいじめの標的となり、佐々木白夜自身は人生に希望を見出だせずにいた。父親が暴力に走ったいつもの夜、糸が切れた白夜は首をくくることを決意する。階段を昇って自室に戻り、静かにそのときを迎えたはず、だったのだが。どうしてか白夜は死ねず、変わりに異形の力をその身に宿していた。


【魅力】

 復讐モノ。個人的に陰惨とした話が好みなのはありますが、それはそれ。白夜が不思議な力を得たことで復讐の化身となっていく、その狂気へと身を落とす変容が魅力に思えます。個人的に力説したいのはですね、白夜は自殺するまで「反抗しよう」とはしなかったんです。無力だから。そんな人生を諦めていた人間が、抗うだけの力を手にいれるとどうなるのか?ひとつの変質がそこには表現されています。


【改善点】

 群像劇。難しいですよね群像劇って。複数の人間にスポットライトを当てることは各キャラクターを掘り下げることに繋がって理解が深まり、より愛着が増すのですが。そのぶん執筆は難儀な点が多くなります。

 群像劇の難点。ただキャラクターを掘り下げるだけなら別物になってしまうこと。キャラクターにスポットをあてる以上、どこかで繋がりを持たせないと読者は読む意味を見失ってしまうと思うのです。

 今作ですと白夜と蒼太のパートの温度差が気になりました。白夜の物語は復讐の色が強く陰鬱としています。しかし蒼太のパートは日常で冗談を言い合うコメディタッチな部分がまだ色濃く、交互に章立てすることによるテンションの変化、と言えばいいでしょうか。その落差にまるで別物の小説を読んでいるように感じます。白夜の復讐にまだ蒼太が深く入り込んでこないせいでしょうか。いずれ関わるとしても序盤でこの落差は初見の読者にはややついていけないかもしれません。ふたつの視点がどう重なっていくのか?「雰囲気を寄せる」といいますか、蒼太のパートにもいささかの不穏さがあると、温度差の解消に繋がるのではと感じます。


【その他】

 群像劇、といえば成田良悟先生ですね。キャラクターの個性が際立つし思わぬところが繋がるしで、ワクワクとキャラクター愛で胸がいっぱいになりました。どうしても煩雑になってしまうジャンルを、読者を引き込んで飽きさせない。大変魅力的な書き方をされる方だと思います。

 と、ちょっと余談が過ぎました。このたびは企画にご参加頂きまして、ありがとうございました。一感想ではありますが、何かの役に立てば何よりです。

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