私を小説家に連れてって (私小連 : ししょうれん) ―― 十八日間のラブストーリー ――
大木 奈夢さま著「私を小説家に連れてって (私小連 : ししょうれん) ―― 十八日間のラブストーリー ――」。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054883265381
今回の企画で書評させて頂くものとしては十九冊目になります。順番とはいえ、なんとなく十八回目に合わせると語呂が良かったのに私はルールに囚われる人だからしょうがないですね。
【あらすじ】
小説家としてデビューしたものの、その後は泣かず飛ばずで再起を誓う「文豪さん」こと本田。ライターの副業をしつつ喫茶店で愚痴を溢す日々に、ある日唐突に変化が訪れる。就活に失敗した元女子学生・北瑠。本田を先生と仰ぎ言いはなった一言「私を小説家にしてください」――売れない作家と押しの強い弟子による、奇妙な「講義」の関係が始まる。
【魅力】
新感覚、と言うべきなのでしょうか。たくさんの手法がこの世にあるなかで、本当の意味の「今までにない小説」は人様の判断に委ねるとして。少なくともエンターテイメント性に特化した小説という意味において、かなりチャレンジした作品だと感じます。
文豪さんから弟子への「小説家講座」がこの小説の双璧、その片割れでしょう。売れない小説家である主人公がきらきらと輝く弟子を相手に、彼が蓄積した知識を吐き出していく。彼の小説への熱意が伝わると同時に、小説の書き方を読者にもレクチャーするような形となっています。読了後の満足感が大きな小説だと思います。
【改善点】
小説家としてのレクチャーを通して、先生と弟子の関係が進展していく。この小説でのストーリーの主軸は二人の関係性だと思って読んでいたのですが、気になったのは場面ごとの繋がりです。
レクチャーから、主人公の小説への並々ならぬ知識、そして思いが伝わってきます。ただ、レクチャーの場面とそれ以外の場面がハッキリわけられている印象を受けました。それ自体は悪いことではないのですが、「講義とそれ以外」というシナリオ展開と捉えてしまうため、講義のシナリオ上の重要度が薄れてしまうように感じます。この物語において、講義とはいかほどの意味を持つのか。講義という軸と、二人の関係という軸。それぞれがどうかかわりあうのか。シナリオに関して私が口を出すのは違うので「こんな展開が良いのではないか」などと言うつもりは毛頭ありませんが、ふたつの軸をどう絡ませるかでストーリー性が変わってくるように思いました。
【その他】
カクヨムの作家さんは、総じてレベルが高いなと日々感じています。最低限の文章の作法は守られているのが当たり前で、土壌が違うんだろうなあと。今回の小説でも主人公が饒舌に小説の書き方、プロセスを力説していて、圧倒的な知識量に感心して読んでいました。
終わりに、書評企画に参加頂きましてまことにありがとうございました。
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