素材屋はじめました!

 今回書評させて頂くのはこちら。teruさま著「素材屋はじめました!」でございます。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885194749

 累計十七冊目になりますね。ではでは張り切って書評、参ります。


【あらすじ】

 マオとマコの兄妹は「素材屋」を営んでいる。強大なモンスターと戦うハンター達。彼らの旅をサポートする装備やアイテムを調達したり、そのもととなる素材を交渉して収入を得るのが主な仕事だ。種々の業者を仲介しつつ、しっかりと利益を得ること。あるいは妙な旅人の冒険に付き合うこと。決して平坦ではない、素材屋さんの非日常に迫る。


【魅力】

 ハイファンタジーといえば?武器を持って巨大なモンスターを倒す、そんな私たちには非日常の世界が日常となっているものが多いです。ドラゴンをはじめとする空想上でしか知り得ない生物との共生は、危険と隣り合わせなのでしょうね。

 モンスターを倒す人間側につい焦点をあてがちですが、今作は素材にもなるモンスターが魅力です。作者さまが緻密に練られた多種多様なモンスター達。モンスターのどの部分が籠手の素材になるとか、棘があるから扱いにくいとか、素材屋ならではの視点で解明されていくのが新鮮です。同じドラゴンにも亜種がいるでしょうし、寒冷地のドラゴンはどんな素材に向くとか、想像が膨らみます。


【改善点】

 小説を構成するのは、ざっくりわけてしまえば「地の文」と「会話文」です。一人称三人称、表現技法、説明や描写など更に肉付けがありますが、ふたつの骨格に何を付け足していくか。この塩梅が作者さまのお仕事であり、腕の見せ所でしょうか。

 知らないことを想像させる表記があります。ジャパニーズホラーなどは一から十まで言うと怖さが半減するので、たとえば「振り向くとそこには……」の先を想像させるわけです。各々が抱く怖い何か。それが連想できればいい、という意図でしょう。

 ですが今作の場合、各々の想像に任せる存在が多すぎるように思えます。マオとマコの容姿は?ドラゴンは四足か、二足歩行できるか?探検するフィールドは?それを「みんなが考えるようなハイファンタジーの世界」と一任してしまうのは、いささか乱暴な気がします。私のように、ドラゴンと聞いて四つ足で羽根を持つものとイメージしている人間には、今後出てくるドラゴンすべてがその見た目で変換されてしまいますので。

 作者さまはモンスターの設定にかなり力を注いでいるようですから、その外見はもちろん、狂暴さ、危険な部位などを表現されると、読者は更にモンスターへの理解が深まると思いました。


【その他】

 剣と魔法の世界でお店を主軸に置くとすれば、そこにはどんな魅力があるのでしょうか。ハイファンタジーの世界観にも当然、飲食店など私たちに馴染みのある店があり、今回紹介した素材屋のように、ハイファンタジーだからこそ生まれる店がある。どちらをメインにするとしても、世界が違うからこその共通点、相違点があるのでしょう。お店の経営事情がその世界での経済成長を見る指針にもなりますしね。

 終わりになりましたが、この度は書評企画に参加頂きましてありがとうございました。一読者の感想が何かしらの参考になれば幸いです。

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