ゆきの足跡
本日、書評をするにあたり、ちょっと考えたこともあるのですが。通常通り書評を誠心誠意行うこと。それが今の私にできることと思いますので、本日も書評、全力でさせて頂きます。
智梅 栄さま著「ゆきの足跡」。十六冊目になります。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054886015279
【あらすじ】
とある雪深い日のこと。雪下ろしが必要なくらいしんしんと降り積もっていく雪を前に、「私」は憂鬱としていた。本来雪下ろしをするはずの家族は外出中。試験勉強のために家に残ることになった「私」の、ひとりきりの夜。テレビの喧騒、無音の雪、かたかたと音を立てているやかん。何気ない雪国の一ページのなか、「私」は睡魔に誘われていく。
【魅力】
短い文章のなかにある、濃密な文章。その濃度は単なる文章としての厚みや文字数ではなく、「私」を通して見える冬の景色、なんてことはない家の様子、そういったものがきちんと描かれています。雪下ろしや雪国の冬の厳しさは、知識として知っていても、なかなか実感できないもの。そういった小説の醍醐味とも言える「文字で実感を抱かせる」ということを体感できる文章だと感じました。
そしてなんといっても、なんといってもそれ以上にこのシナリオが最大の見せ場であり魅力なのですが……ネタバレになるので何も語れないのが惜しい限りです。
【改善点】
難しいです。何がと言うと、改善点を提示するのが。それはこの小説に文句をつけるところがない、という意味ではなくて(もちろん素晴らしい小説です)、お話ししたいことがネタバレになるため、です。
ということで、今回は前半に関して少々、ネタバレのない範囲のお話を。意図的だったら申し訳ないのですが、前半は「私」の日常風景を描いているのに、時間帯がうまく掴めませんでした。後半で初めて時刻が示されて、そうか前半の時間軸は夜だったのねと気付く感じで。後半との対比も含めて、前半は「私」のなんてことはない一日という面を際立たせるため、「外はすっかり暗くなっていた」など、テレビ番組のほかにも景色など複数の視点から時刻の移り変わりを描くとわかりやすいかと思われます。流れていく時間の「はやさ」を追体験できると、後半がより活きるのではないでしょうか。
【その他】
この小説、ジャンルが「ホラー」なんです。ジャンルのお話は前のページで語らせて頂きましたね。こちらにも皆様からジャンルに対する様々な思いを頂き、非常に参考になりました。ジャンルわけって難しいです。しかし、そのジャンルという「箱」を逆手にとってのどんでん返しとか、そういった使い方もできそうだなと、この小説を読んでいて思いました。ジャンル詐欺だと怒られてしまいそうですが。
最後になりましたが、このたびは企画に参加頂きましてありがとうございました。
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