英雄たちの舞台裏
十四冊目とあいなりました。ペースとしては一日一冊くらいで、参加していただいたのが59人ですので単純計算二ヶ月くらいで完走予定です。だがあくまでも予定。長編や文字との相性もあるので順風満帆とは行かないでしょうが、作者さまに全身全霊で捧げたく。
今回書評させて頂くのは猫田芳仁さま著「英雄たちの舞台裏」です。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884504441
【あらすじ】
職業・ヒーローになりたかった相沢直はしかし、致命的な適正不足によりその道を閉ざされる。社会のために戦うヒーローにどんな形でも関わりたい。そう願った直は、ヒーローの「パートナー」として身の回りをサポートする仕事に就く。試験的な制度であるパートナー。その仕事相手であるヒーローは直のイメージを裏切る、傲岸不遜で我が儘な存在だった。
【魅力】
悪と戦うヒーローが職業になった世界、華やかに戦う彼らを支える縁の下のお話です。裏方として衣食住などを管理するパートナーにスポットを当てたというのが、まず興味深い設定です。
しかしこの小説の本懐は、パートナーとヒーローの間にある複雑な人間関係にあるでしょう。支え、支えられならば円満な関係が望ましいはずなのに、出てくるコンビは難題を抱えてばかり。普通の人間が抱く、一個人への疑念、恐怖、そして信頼。戦いじゃない、彼らなりの人間ドラマが描かれています。
【改善点】
人間関係に焦点を当てたためか、その内面の苦悩や環境が細かく描写されている小説です。心理面を理解するためにはキャラクターの背景を知る必要がある。その表現方法は多岐に渡ります。
キャラクターとの関係を見ていく上で、外側の描写の少なさが気になりました。髪色、目の色、服などを事細かに描く必要は感じません。しかし、パーソナルに関わってくる場合ある程度の外見描写が欲しいのも事実です。具体的には、初対面の雅貴の容姿。コーヒーをぶっかけられた状態では彼の見てくれはわからず、大人か子供か男か女か、読者には情報がありません。ですのでそのあとの「童顔だったからタメ口で話した」という直の行動原理が、彼の見た目を知らない読者には伝わらないのです。登場人物の振る舞いやセリフが外見に拠る場合、読者にもその情報は早めに与えておくべきかと思います。もちろん、一から十までやるとくどくなってしまうので、見極めは重要になるかと思いますが。
【その他】
子供の憧れだった、正義の味方。最近ではそういった事情だけではない、一筋縄ではいかないヒーローの話も見かけます。勧善懲悪で済まされない世の中が反映されているのでしょうか。そういった部分も含めて、ヒーローというシンボルには興味があります。正義や現状に苦しみ、悩む姿というのも人間臭くて私は好きです。生身の人間だからこそ応援したくなるものですしね。
最後になりましたが、書評企画に参加頂きましてありがとうございました。
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