黒の少女と弟子の俺

 四作目はこちら。まるまじろさま著「黒の少女と弟子の俺」。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885388390

 女の子とファンタジーの親和性の高さ。みんな大好きラブコメもあるよ!

 ということで慎んで書評、参ります。


【あらすじ】

 荒廃し、ドラゴンをはじめとするモンスターの蔓延る世界エオス。戦わなければ生き残れない世界で、エリオスが師匠と仰ぐのは若干八歳のドラゴンスレイヤー、ティア。兄と敬愛し、時に厳しく師匠として接するティアにエリオスも弟子として従事する。師匠のライバルとも言える出会いを重ねながら、荒んだ世界で楽しく生きていくための日々の物語。


【魅力】

 八歳のドラゴンスレイヤー、ティアちゃん。正直このワードだけで魅惑です。年のせいとか言いたくないんですけど、最近二次元で好きになる子の年齢層がどんどん下がっていまして……というのは私情ですね自重します。

 天真爛漫、でもちょっと独占欲が強い女の子。その子を純粋に師匠と仰ぐエリオスを尊敬してしまいます。キャラクターが魅力の小説はどうしても女の子に目が向きがちですが、主人公のエリオスは子供のティアのことを侮らないし、師匠として仰いでいる。その純粋さが眩しいですね。


【改善点】

 この小説のウリがキャラクターであり、彼女たちに翻弄される主人公の日々の積み重ねを追いかけていくスタイルだと理解しました。キャラクターによって小説に魅力をもたせ引き込んでいく場合、ではキャラクターの個性って何?と考えます。壮絶な過去?ぶっとんだ設定?それらはあくまで「資料集」で述べればいいことで、そこに「人間性」を付与していくことがキャラクターメイキングなのかなと、少ない経験で思うのです。

 今作ですが、そのキャラクターを動かす頑張りどころがずれているのかもしれません。「サンドイッチ食べたい!」といった日常会話がキャラクターの生きた動きであることは確かにそのとおりです。けれど、そういった普段の会話に力を注ぎすぎるあまり、キャラクターの過去が説明文で済まされてしまっているのです。他人に言うのが憚られる辛い過去。どうして主人公に話そうと思えたのか?その決意や覚悟を踏まえて喋らせてあげると、新しい表情が見られてより人間らしくなるのではないでしょうか。明るい性格の人間が毎日明るいとしたら、それは人間ではありません。気持ちの浮き沈みや感情の振れ幅が考慮されていないからです。ウエイト、という言葉をつい濫用してしまうのですが、何を喋らせて何を地の文で語るか。一度見直してみると、よりリアルなキャラクターになるのではないかと思います。


【その他】

 異世界ファンタジーでよく絡められる、ラブコメ要素。ラブコメファンタジーってハーレムものが多い気がするのですが、なんでなのかなーと考えます。自分がモテる、ちやほやされることへの優越感?ファンタジー世界でのご褒美なのでしょうか。複数の女性あるいは男性に愛されるにはそれなりの魅力が必要だ、と考えてしまうもの。主人公最強小説にハーレムが多い理由がその「力」にあるのなら、皮肉なモテ期だな、とも感じてしまいます。今回の小説は主人公最強じゃないですが。

 終わりになりますが、書評をさせて頂きまして本当にありがとうございました。キャラクターに焦点を当てて構成された世界が微笑ましかったです。

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