クロノステッチ・オーケストリオン
三作目。偽教授さま著「クロノステッチ・オーケストリオン」です。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885280385
クトゥルフ神話やTRPGはほとんどかじってないので、正気度というものがいかに恐ろしい数値なのかとか、その辺がいまひとつピンと来ていない人間なんです。だから、これから書くことはまったくクトゥルフを知らない人間が、この小説を「小説」として読んだときの感想です。
【あらすじ】
壮絶な交通事故を奇跡的に生き残るも、玄野達樹はすでに五体満足ではなくなっていた。失明した真っ黒い世界、もう社会復帰は望めない状況。そんななか同じ事故のもう一人の生存者、白亜との出会いが希望となる。将来を約束し、穏やかな第二の人生を始めようとしていた矢先、「それ」は彼の前に現れる。
【魅力】
人間が得体の知れない何かに侵されていく。その恐怖、内面の変化。大きな起承転結があるわけではなく、徐々に首を絞めていくような展開。ジャパニーズホラーはそういったひたひたと迫り来る恐怖を個性にしたジャンルですよね。アメリカ的な度肝を抜くビジュアルと、ジャパニーズホラーの静かな恐怖。これを融合したお話かなと感じました。気付いたときにはもう遅い、という言葉が適切な展開ですね。
【改善点】
エンディングは見えたし、わかったんです。その過程を描くことが肝となる話でしょうから、その徐々に支配されていく過程をより明確にしてほしいなというのがひとつ。白亜を愛している、あるいはいかに白亜が大切かわからせる描写がほしいのがひとつです。
エンディングを踏まえると白亜を大切にしていなければアレとの戦いも成立しませんが、もう一声エピソードなど踏み込んで白亜の魅力、主人公がどれほど愛を注いでいるかを明確にしておくと、白亜のためにも負けられないぞという展開につなげられると思います。私は「同胞」だから家族になったのかな、と読み取りましたが合っているのかどうか。
この小説の核、徐々になにかが狂っていくプロセスですが、どうにも私にはその恐怖がピンと来なかったです。クトゥルフを知らないせいなんでしょうか。徐々に身体が乗っ取られたり、何かを失っていくのなら、それがわかる明瞭な一文が欲しかったです。たとえば「右目がない。」みたいな強烈かつ端的な一文があればアクセントにもなり状況も整理しやすいかなと。
【その他】
クトゥルフって近年人気ですが、あれはグロとかに入る……のではないんでしょうね。ちょっと見た目がエキセントリックだったり、異星人みたいな異質感?がウリなんでしょうか。私のクトゥルフの知識は残念ながら某ゲームのタコさん変態絵師なので、きっとクトゥルフ神話の邪神ってこんなに可愛くないんだろなと思いつつ見てました。未だにSAN値って何かわからない。
胎児の見た目をしたアレが世界観にマッチしててお気に入りです。
最後に、この度は書評させて頂きましてありがとうございました。新しい知識と表現の可能性を見ることができました。
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