第4話〜ストラヨーク陸軍基地〜
息子の自慢をしてもいいですか?
ウチの子、
ホントにすごいんです!!!!
白い髪の毛に、ポンポンのついた白いニットとまん丸ほっぺが可愛い幼い4才の男の子!
ベルくん!
この子と暮らし初めて早くも3カ月が経ちました。
相変わらず無口で無愛想だけど全然気になりません!だってこんなに可愛いんだもん!!
ベルくん普段はすごく不器用です。
何も無い場所でもすっ転んだり、
四六時中ボーーーっとしてるし、
消しゴムやクレヨンをむさぼり食ったりするようなアホの子です。
でも……
時折ビックリするようなすごいことをします!!
ベルくんは物覚えがすごく早いんです!
ううん 早いなんてもんじゃ無い……異常です!!
こないだ一緒にテレビを観てた時、
テレビでやってた手品をベルくんが隣でいきなり実演した時はマジでびびった!
どうやったの!?
知人の演奏会に行った時、
ベルくんは初めて渡されたヴァイオリンで、
知人の弾いてた難しそうな曲を完璧に弾きこなしてみせた!!
知人の心は折れていました……。
ベルくんと一緒にカジノに遊びに行った事もあった。
あぁ、ホントは子供は入れないよ?
あたしが常連で顔見知りでニーナの子だからってことでオーナーに無理言って入れてもらえたの!
でね?
その日もあたしは店のディーラーにいい様にやられててたんだ。
チップは残り数枚…あたしは手持ちのお金のほとんどをスッてしまった……。
意気消沈して帰ろうと思った時、ベルくんを見たら暇そうにしててかわいそうだった……。
ベルくん無視して一人で楽しんで悪いことしたな……。
だから残りのチップで遊ばせてあげたの!
そしたら……。
まさかのボロ勝ち!!
あたしの負け分を取り返してくれた!
もうね……
開いた口が塞がらなかったよね……。
とにかくベルくんはなんでも覚える!!
すごいの!
まぁ……覚えたことの大抵は次の日にはすっかり忘れて元のアホの子に戻ってるんだけどね……。
たしかサヴァン症候群……だっけ?
そういう天才がかかる病気みたいなのがあるんだけど、ローズが言ってたベルくんの精神的欠陥ってこのことなのかな……。
まぁ、そんなこんなでベルくんとの生活は順調です!
おっとこんな事をしてる場合じゃない……仕事に行かねば!
◇
軍服に着替えて階段を降りる。
「ベルくん〜?仕事行ってくる!いい子にお留守番しててね!」
ベルはリビングで愛犬スフレと遊んでいた
「へっへっへっへっへ……。」
「……スフレ…………。」
ベルはスッと手を差し出すとスフレはペロペロと舐め始める。微笑ましい光景だ
手を舐めていたスフレが立ち上がりベルの顔を舐め始める
ベルがよろけて倒れるけど
それでもお構い無しにスフレの執拗な攻撃が続く
「ぺろぺろぺろぺろぺろ……」
起き上がろうとするベル
スフレはベルのズボンを引きずり下ろすと、ベルはズボンに足を取られて再び倒れる……。
おしりが丸出しだ……。
「へっへっへっへっへっ……」
スフレが尻を剥かれたベルに覆いかぶさる……。
なんかいろいろマズくね……?
変な汗が吹き出てきたんだけど……。
「スト〜〜〜〜ップ!!!」
あたしは見兼ねて制止をかけた。
「くぅーん……」
スフレがどこか残念そうだ。
ベルを家に置いておくのが不安になったので、あたしはベルを職場に連れて行くことにした。
◇
ストラヨーク陸軍基地
「ギャアハハハハハハハハハハ!見ろよみんな!ニーナがガキ連れてきたぜ!」
「…………………。」
「お!それが前に言ってたお前の養子か……。プックク……似合わなねぇなぁ〜。ってかここに連れてくるとかお前バカか??」
基地に着いて開口一番ブランチに笑われた
リーフは軽口を叩いてあたしを弄ってくる
ベルは相変わらず無言だ
「うっさいなぁ!こっちもいろいろあるんだよ!」
あたしが率いる特殊部隊は全部で12名!
ストラヨーク陸軍の各部隊にいるエースだけを集めた精鋭たち!
陸軍最強部隊だ!
そんな中でもあたしの序列は一位。
ブランチは黒人のガッシリした偉丈夫で
あたしと同期のムードメーカー!
序列は4位。
リーフは紅眼をした白人で
訓練ではいつもあたしと組まされている。
なんでも卒なくこなす生意気な後輩!
序列は2位。
「ワハハ……とにかくガキが居たんじゃ訓練にならんだろ?今日はフリーだから俺がめんどう見といてやる」
「お!マジで!?助かるな〜♩ありがとう!」
「おう持ってけ持ってけ、
そんなのに訓練中ウロチョロされたらたまんねぇからな!」
「リーフ!!そんなの呼ばわりしないでくれる?ベルくんはおとなしいから!!」
「ハハハハハ……」
この2人とは隊内でも良く話す!
大事な仲間であり、
共に戦場を駆け抜けた戦友です。
◇
パーン…パーン……
射撃場に来ていた
当然結果はパーフェクト!!
うーん流石あたしだね!
「ふぅ……。」
「相変わらず化石みたいな銃使ってるなニーナ……そんなもん使ってるのお前くらいだよ」
リーフはあたしの相棒をディスって来る
あたしの
無骨ながらも洗練された素晴らしいフォルム!
とっくの昔に生産されなくなったけど、軽くて扱いやすい最高の銃だ。
わかってないなぁコイツも……。
「 いいですか?リーフさん!
当てて穴が開けばそれだけで簡単に人は死ぬからね!」
今の軍では《
が標準装備になっている
核電池を内蔵したリモコンのような形をした武器です
親指でボタンを押すと圧縮された核エネルギーが射出される。
銃身の側部についているダイヤルで出力を調整できて、最大出力なら電池の減りは早いけど長距離射程の銃になり、
出力を抑えるとなんでも焼き切れる剣にもなります!
小型で反動も無いし、
遠距離にも近距離にも使える大変優秀な武器なのです。
あたしは使わないけど。
「そう言うもんか?まぁ使い慣れた武器使うのが一番だからな」
「そゆこと♩」
リーフには今度あたしのコレクションの素晴らしさを教えてやろう。
「それにしてもあのニーナが母親ねぇ……。未だに信じられねぇよ」
「それな〜あたしも同感……。まずは結婚が先でしょ!?」
「ハハハ……
でもお前はまずその金遣いの荒さをどうにかしろ!
それからそのガキみてぇな性格!お前ぇ今年でいくつだ?
あとお前の家汚すぎ!ゴミ屋敷かよ!そんなんだからいつまでも男ができねぇんだよ」
ぐっはぁあああ……!
あたしの繊細な心はリーフの言葉の刃でメッタ刺しにされました。
「一緒に住んでるあのガキに同情するぜ……。
お前は見た目は悪くねぇんだからもうちょっと努力しようぜ?女としてどうなん?
なんだったら俺がもらって………」
「リーフ……次の実戦訓練……殺すよ?」
あたしはリーフを見下ろし、冷徹な声で言い放った。
「……………」
リーフは喋らなくなった
◆
俺はブランチ・ワーグナー
ニーナからガキを預かって
今コイツにこの基地を案内してるんだが
ちょっと壁にぶち当たってる……
心の壁ってやつだな
自慢じゃねぇがこれでも2児の父親だ
ガキの扱いは慣れているつもりだがこのボウズはどうだ!?
「…………………。」
一っ言も喋らねぇ!!!
人見知りにも程があるだろ どうなってんだ!?
俺が一方的に喋ってる状態だ!!
「そうだボウズ!これからお前の母ちゃんが実戦訓練をやるんだ!どうだ!?
……観に行かねぇか?ワハハ」
俺は反応のねぇボウズをニーナの居る訓練場に連れて行くことにした。
◇
訓練場に着くと、
ちょうどニーナとリーフの実戦が始まろうとしていた。
今日の訓練はナイフを使っていいらしい。
まぁナイフっつってもゴムでできたダミーだけどな。
「おいニーナ悪かったって!機嫌直せって!?」
「え?聞こえないんだけど。早くして?」
ワハハ……
ニーナがなんか怒ってるっぽいな。
どうせリーフがまた地雷踏んだんだろ。
開始の合図があると、
リーフの猛攻が始まった。
リーフは武器を使った戦闘が得意だ
前回は徒手だったからリーフはニーナに瞬殺されたけど、
今回は動きが違う!ニーナもやりづらそうだ
ボウズの方に視線を落とす
「………。…。…………。」
「なんだボウズゥ?母ちゃんが心配か?」
「………。…………」
ボウズはニーナとリーフの試合を無表情にただじっと眺めている。
「ワハハハ!心配すんなって!なんせお前の母ちゃんは超〜強ぇ!!持ってる
ナイフを巧みに使い攻めるリーフに、
だがしかし、ニーナは最小限の動きで紙一重に躱しきってみせる
その動きは流れるように美しく、無駄な動きなど一切ない
「…………。…。…。………」
「っう!?!?」
そんな攻防をただ無言で見つめるニーナのガキの無機質なその眼は……。
まるで幼い子供の形をした、
別の何かの様だった。
不気味だった………。
◆
リーフとの勝負は当然あたしが勝った。
虚実を織り交ぜたナイフ術、
一見雑に見える攻撃も、
実は幾重にもフェイントを織り交ぜたすごく繊細な技術なんだとわかる。
やっぱリーフは武器使うと違うなぁ。
でもそんなリーフの攻撃は一発たりともあたしに触れることはない。
あたしには経験でなんとなくリーフがどんな行動を取るかわかるんです。
持ってるナイフを蹴り上げて、
そのあとリーフ眼球に向けて掌底。
フラッシュしてよろけた一瞬の隙をついて、
訓練用ナイフでリーフの首めがけて一閃!
この訓練はK.O.するか、急所にナイフを当てれば勝利なのだ!
「痛ってーなニーナ テメ、最後の1発アレ必要か?完全に決着付いてたろ!」
うん。
だってそれだけじゃ気が済まないじゃん?
だから『勝負あり!!』って言われた後に思いっきり顔面に拳をめり込ませてあげました♡
リーフはあたしの可憐な乙女心を傷つけた。
満足しているあたしをジト目で睨みながら、
リーフは頬をさする。
その後、あたしはブランチに預けてたベルくんと合流するとそのまま家路に着きました。
そういえば帰り際、ブランチに耳打ちされたっけ?
「おいニーナ。このガキ変だ、気を付けろ。俺の勘がコイツは危険だって言っている。」
ちょっと気がかりだ……。
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