第13話 頑張った成果
(待ってました)
(おっ、ホントにかわいい子ばっかり♪)
(美少女ペロペロ)
(イケメンは帰れwww)
どうやら男性の視聴者が多いらしい。
コメントの内容については、全面的に同意しかないな。
『離れろ!』
『絶対やばいやつだぞ!』
『なによ、これ……』
(ティラノキター゚+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゚)
(涙目のJK! 惚れるーーー! )
化物の迫力やクラスメイトたちの容姿の良さが、動画に花を添えている。
やはりイケメンや美少女は、何をしても得らしい。
だが、そんな和気あいあいとしたコメントたちも、化物が動き出すと様子が一変していく。
(イスが食われた……?)
(みんな、マジ泣きじゃね?)
(CG? リアル過ぎるぞ)
視聴者たちに生まれた、小さな疑問。
『日本独自の技術を高校生たちがアピールする』というニュースの言葉が、ゆっくりと紐付いていく。
(この化物、もしかしてホンモノなんじゃ……!?)
(恐竜を復活させた!?)
疑問が半分、戸惑いが半分。
そんな中で、俺すら知らないコメントが書き込まれていく。
(台本もないんじゃねーの? 1組はみんな食われたぜ?)
(3組も全滅)
(は? 死んだってこと?)
(テストが終わったら、みんなビー玉の中から出てきた)
どうやら他のクラスはそんな結果になっていたらしい。
画面から視線を外して将吾を見つめる。
「他のクラスを見るときはここを指で押せばいいのか?」
「ん? おうよ。ってオッサン、動画再生したことねーの?」
「……知識だけはある」
残業のせいで動画を見る時間なんてなかったからな。
「オッサン的にはきれい系が多い方が好みだよな?」
「ん? いや、俺はどっちでーー「こっちだせ!」」
将吾が食い気味に画面に触れる。
映し出されたのは、入学式の案内をしてくれた美人教師と、1組の生徒たち。
こちらは教室で行ったらしく、ふたまわりほど小さな化物が、机や椅子を踏みつぶしていた。
『くっ、くるなぁああああああああああ!!』
『いやーーーーーー!!!!!!』
真っ先に狙われたイケメンが頭から飲み込まれた。
天井を見上げた化物の口から、骨を砕く音が漏れている。
クラス全体に唖然とした恐怖が満ちていた。
『ひぅっ……』
『やだよ……、#梨花__りか__#を返してよ……。たったひとりのともだちなの……』
瞳に絶望を宿したまま、ひとり、またひとりと、化物に食われていく。
「これは、ひどいな……」
見栄えが、映像が、演出が……。
正直、目をそらしてしまいたくなる。
『全員赤点ね』
最後は全員が食われてテストが終わり、担任が数十個のビー玉を投げる。
その中からイケメンや美少女たちが出てきたものの、誰しもが恐怖や絶望、涙でぐしゃぐしゃだった。
将吾に負けず劣らずのイケメンたちが、今は見る影もない。
(これはちょっと……)
(悲惨)
(ホラーだけど、なんかあんまり……)
流れるコメントも数が少なく、哀れむような物が多かった。
命があったのはなりよりだが、『稼げる冒険者になりたい』『有名人になりたい』と夢を抱く彼らには、致命傷とまでは行かなくても、重たい足枷になるだろう。
「俺らがこうならなかったのは、的確な指示をしたオッサンのおかげだな」
「いや、俺を助けた将吾のおかげだろ?」
今見た物を頭から追い出して、将吾と顔を見合わせる。
ふー……、と大きく息を吐き出して、ビールの缶をあおった。
彼らもまだ高校生。
足枷をはずすチャンスは、いくらでもあるだらう。
(すげー、逃げ切った)
(可愛い子をかばうとか、かっこよずぎだろ!)
(俺、スーツとサングラス買ってくる)
俺たちのクラスは彼らよりも、ほんの少しだけ前に進めている。
向けられた賞賛の声が、今は素直に嬉しかった。
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