夕刻、丘の上

月華紅雨

第1話

今日も学校は人々の悪口で埋まっていた。その罵詈雑言の中には少なからずや自分に対してのものも含まれていたらしい。

顔がウザイとか存在が鬱陶しいとか頭いいアピールとか言われても僕にはどうしようもないじゃないか、解決策を示してくれ。そもそもなんで僕だけが責められなきゃならないんだ。なんで教師は見て見ぬふりをするんだ。

なんで、なんで、なんで、そのなんでが積もっていく度に自分の身体は何者かに削り取られていくような錯覚を覚えた。心臓を抉り取られるかと本気で思ってしまうほど苦しく、痛くなった。

「もうこんな世界消えちまえよ。なんで消えないんだよ。おかしいよ。」

誰もいない丘の上でぼそっと呟いた。今ここで呟いてもなにも起こらない。どれだけ足掻いても願ってもない明日はきっとくるし、周りを巻き込むのもどうかと思うからせめて自分の世界だけでも滅亡すればいいのになんて思っても消えるはずはない。

行き場のない怒りと虚無感を乱暴に綺麗な色の折り紙へずっと書き殴っていた。次第になにも読めなくなるくらい汚くなった。

それから折り紙を自分が小さい頃作ってた時のように紙飛行機を作った。その頃は楽しかったなと懐かしさに浸ってたら何故か涙が出てきそうになった。

そして、

「今日の感情はさようなら。」

といって、深呼吸をした後にそっと風に乗るように飛ばした。

あまり良くない内容が書かれてある紙飛行機と綺麗な夕刻の景色がミスマッチで自分を嘲り笑ってるように不覚にも思えてしまった。

ただ、どれだけ自分を嘲ってようが笑ってようが、これだけ綺麗な夕方の町の風景と山の谷間に沈んでいく夕日が見える丘は恐らく僕だけしか知らない。

それを考えると少しだけ優越感に浸れた。明日も頑張れるかもと前向きに考えることも出来る。

「なんだかんだで生きたいんだよなあ。明日もまた来るか。」

田舎町が色のグラデーションで染まっていく様子を眺めながら今日はカレーに違いないとあれこれ考えながら丘を下った。


明日もまた同じ風景を見れますように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夕刻、丘の上 月華紅雨 @tukisame

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ