クソゲー2 第19話  環境アップデート

椅子に座らされたオレ。

目の前にはミナコ、アスカ、ルイズにリリカ、そしてメルが居る。

空気のトゲトゲしさは、尋問中のせいだろう。


ゲームの電源が切られるなり、この状況は作られた。

移動する暇すら惜しんだので、運動場でセッティングされた『反省会議』だ。



「リンタロウ。あの子とはどういう仲なの?」


「どうもなにも、知り合ったばっかだぞ」


「モブキャラじゃないの。知ってると思うけど、攻略対象外よ?」


「そうだな、専用イベントなんか1つもねぇし」


「あんな子の何が良いんだか。きっと羽虫の食べ方も知らないでしょうね」


「壁走りだって出来ないハズです」


「だからだよ、この野郎!」



何人かが鼻で笑うのを感じた。

そして口々に『あれじゃあインパクトが足りない』だの『フック無さすぎ』だの好き放題に言う。



「んで、リンタロさん。あの子を『攻略対象』に格上げするんスか?」


「えっ。そんなこと出来んの!?」


「あ、いや。すんません。アタシは知らねッス」


「どうなんだマリスケ!」



遠巻きに眺めていたマリスケに聞く。

アイツはエルイーザ人形を胸に抱きつつ、静かに首を振るのだった。



「残念ながら無理でゴザルよ。そこまでの事となると……創造主のお力に頼るしか無いでござろう」


「そう……だよな」


「何だかゴメンね、リンタロウ。私たちが変なばっかりに」


「いや、いいんだ。何も良くはねぇが仕方ねぇ事だろ」


「苦悩を抱えていますね。それも異世界に行くことで万事解決……」


「メル、お前はちょっと黙ってろ」 


「君子リンタロー。微力ながら手助けするでござる。かのモブ女子に、ちょっとした会話を設定することは可能でありんす。例えば、顔を見たときにコンニチハとか」


「うん……うん、ありがとうな」



それは余りにも些細で、小さな変化。

でもそれだけでも、心がわずかに軽く、そして暖かくなるのを感じた。

ごく普通の女の子が居るというだけで。

エミルという少女の声が聞けるだけで……。



「もう少し時間を貰えれば、システムも解析できるでござる。そうなればイベントの1つもプレゼントするでごわす」


「時間かぁ。ちょっと厳しいかもな。ユーザーはだいぶ早解きしてるし」


「せめて普段から台詞のあるモブであれば、後付けの編集も楽なのでござるが……」


「そうだよ! モブキャラが随分と生々しく動くと思ってたけど、もしかして?」



マリスケが不敵な笑みの後、高々とエルイーザ人形を掲げた。

いや、意味がわからんが。



「無論、拙者の力でござるよ! リアルタイムで有力モブキャラのデータを修正してるでござる!」


「薄々予想はしてたが、お前だったか。んで、その人形も関係してんのか?」


「これはナビゲーションでござるよ。この子を介してシステムにアクセス出来る……という寸法でござるな」


「魔法少女の姿をしてんのは?」


「趣味でござる」


「まぁそうだろうよ」


「それはともかく、今後はよりモブキャラたちを絡ませる事が可能になるでござる。少なくとも、進行不能で詰まる事は有り得なくなるでごなす!」


「ごなすって何だよ。まぁともかく、お前に任せてみるか」


「エルイーザたん。これからも頑張ろうでござる!」



腕の中の人形と活躍を誓い合うマリスケ。

オレもここまで吹っ切れれば楽になれるかも……と思わんでもない。

当初は憐れみの対象だった友人が、少しだけ羨ましく見えた。


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