クソゲー2 第10話 文化祭の準備
ルイズとのデートを無事に終えた後は淡々とした日常が続いた。
平日は部活、週末はバイト。
それが1週間続くと、パラメータは次のようになった。
体力10(ー5)
学力12(ー2)
雑学40(+5)
ルイズの好感度 45(+5)
所持金 17500円(+10000円)
それなりに順調なんだが、体力ヤバイな。
ちなみにゼロになったら一週間ほど寝込む必要がある。
どこかで回復してくれると助かるが。
さて、今週は強制的なイベントがある。
場面は昼休みの昼食に始まり、そのあとホームルームで文化祭について話し合いがされるものだ。
一周目の時は3組のリリカに頼りまくるという悲劇が起きてしまった。
ものっ凄い額の大金が動いたのも、見栄っ張り成金という設定があったからだろう。
もちろん二週目は別の選択が求められるが……。
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「昼食を愉しむ君子諸君(くんししょくん)。今日も最高の楽曲を用意したでござるよー!」
マリスケの声がスピーカーから響き渡る。
すっかりお馴染みとなってしまったお昼のディープなひととき。
アニソンを流すにしても、一般ウケするものを選べと詰め寄りたい。
「長々とした前口上は嫌われるでござるな。早速いくでござる。アニメ『パイタッチ甲子園』より『アツき血潮のメンズ・ブラ』をお聞きあれ!」
「ゲホッ ゲホ!」
それは萌え系じゃないけどさ。
確かに萌え声じゃなくなったけどさ。
もうちょっと厳選しろよこの野郎。
スピーカーからはやっぱり割れ気味な歌声が流れ始めた。
『オレとぉー(ワワワワァー)
お前のぉー(ブラブラー)
熱き血潮で繋ぐ
シルク・ブラ(ジャジャジャジャー)』
辛い。
片寄った成分の歌詞と野太すぎる歌声が。
これには着実に食欲を削られてしまい、箸が度々止まる。
今ばかりは平然と過ごせるモブキャラたちが羨ましくなるな。
ミナコはと言うと、それほど不快に思っていないようだ。
平然とした顔で箸を口に咥えている。
「マリスケくんって凄いねぇ。たくさんCD持ってるんだ。音楽が好きなのかな?」
「アイツのは違うぞ。アニメで使われなきゃ見向きもしねぇからな」
マリスケの部屋に何度か遊びにいったが、まさにアニメの世界をギュウギュウに詰め込んだ感じだった。
特定のマンガやDVDは全巻制覇。
関連CDにフィギュアもズラリ。
さらには特大ポスターやら等身大抱き枕やらコラボ商品などなど。
まるでマニア向け雑貨屋のような雰囲気だった。
逆にサブカルと無関係なアイテムは一切無く、その徹底ぶりは偏執的というか洗練されてるというか。
ちなみに萌え系8割、ネタ系2割くらいの案配だったか。
「いやぁ名曲でござったなぁ、心が洗われるようでござる。続きましてー」
「あぁ、勘弁してくれ……」
すっかりラジオDJ気分になったマリスケが、上機嫌で曲を回していく。
オレは箸の動きがどんどん遅くなる。
体力値が10しかないんだから、飯くらいシッカリ食わせてほしい。
そんな昼の惨劇が終焉を迎えると、午後イチでホームルームが始まった。
担任が黒板にいくつも項目を書き連ねていく。
内容は文化祭のもので、催し物をどうするかという話だった。
「色々あるんだねぇ。喫茶店、迷路、博物館……どれも面白そう!」
ミナコは1週目の事をスッカリ忘れてはしゃいでいる。
この後担任から、教師とは思えない鬼畜発言が飛び出すというのに。
「さて、先生から提案がある。出し物についてはさておき、文化祭の準備は業者に頼もうと思う」
「……きたよクソ野郎が」
「先生ー、ギョーシャって何ですかー?」
「つまり、お金を出してプロの人に店なんかを作って貰うんだ。そうすれば皆も勉強の時間が取れるし、成績を落とさずに済むだろう?」
「そうするとお金がたくさん要りますよね。どうするんですか?」
「3組にお金持ちが居るだろ。彼女に誰かお願いして、5百万くらい引っ張ってきてくれないか?」
安定のクズ。
しかも自分の手を汚さないって所が最大限にゴミカス。
悪びれた様子が全く無い点が人間失格。
何かの流れでこの担任が逮捕とかされねぇかなと思う。
そうしたら率先してマスコミの取材に応じるのにな。
残念ながら、今のところその気配は無いが。
「ねぇリンタロー。これじゃあリリカちゃんが可哀想だよ」
「そうだな。そもそも今のアイツが払うはず無いし」
「どうだみんな。金持ってるヤツが金払うのは当然。こういう時は支え合いってな!」
ここでシーンがピタリと止まる。
ユーザーに選択肢を選ばせるためだ。
【担任の言葉に何と発言しますか?】
・任せてください親ビン。キッチリ取り立ててきやすぜ!
→・最後の文化祭だし、自分らでやりたい。
・誰かオレのブラジャー知らない?
2が選ばれる。
当然だよな。
もし3が選ばれてたら延々呪ってやる所だ。
「先生。最後の文化祭なんだから、自分らの手でやり遂げたい」
「私も賛成! みんなで一個一個作ろうよ!」
「ええー、先生は手伝わないからな?」
「別にいいよ。期待してねぇし」
「……んだよ。せっかくの儲け話がよぉ……」
今とんでもない事を言わなかったか?
もしかして通報しといた方がいいか?
あ、ダメだ。
この世界に警察は居ないんだった。
こうして資金調達の話は流れて、クラスのみんなで少額ずつ負担することになった。
出し物案もすぐにまとまり、ウチのクラスは迷路をやることに決めた。
その間担任はというと、教室の後ろでずっとスマホいじってた。
進行を学級委員に譲った後にだ。
『全然当たらねぇ詐欺ガチャじゃん!』とかうるさかったっけ。
くたばれ。
そして迎えた放課後。
部活に行こうとしたオレを呼び止めるヤツがいた。
「聞いたわよ。私に対する馬鹿げた策謀を防いだんですってね」
「策謀? あぁ、そういう事になるのか……?」
「殊勝な心掛けね。これをあげるわ、取っておきなさい」
「おい、こんなもん要らねぇよ」
「ではごきげんよう」
「待てって!」
リリカが逃げるようにして去っていった。
この世界は話を聞かねぇヤツが多すぎねぇか。
イベントの最後には効果音と共にシステムメッセージが流れた。
パラメータや所持品に変更が起きたためだ。
【リリカの好感度+10】
【何かの虫 を手に入れた】
テテーン。
テテーンじゃねぇよ気持ち悪ィ!
手のひらでウゴウゴしやがって!
真っ白くて節だらけで丸まって蠢く虫を、光の早さでアイテムボックスに送った。
『何かの虫』がアイテムリストの2番目に載る。
あぁ嫌だ。
オレは虫は苦手なんだ。
だから神様ユーザー様お願いします。
どうかリリカとだけはくっつきませんように。
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