第24話 邂逅
暫くそんな奇妙な前後伴走が続いたその後、左へウィンカーを点滅させ蝙蝠蜘蛛は"峠の駐車場"のスペースに入ってゆく。
少し距離を置いて、才子のポルシェも追従した。そして微妙な間隔 = 2〜30mほど離れた、何かあればいつでも逃げれるところに静かに停めて様子を窺う好奇心旺盛な高校生たち……
陽は暮れはじめ辺りをオレンジ色に染める。
丁度此方から夕陽の沈む方向にアイドリング状態の侭佇む蝙蝠蜘蛛
なだらかなその斜め後方からのシルエットは逆光に浮かび上がり赤はオレンジに融けるようでその造型と陰影の美しさに思わず息を呑んだ……
ごぅ……と風の流れる音ひとつ、
木々の
相変わらず人工の音がまったくしないこの場所に2台の新旧ポルシェの全く異なるアイドリング音だけが低く静かに響く。
チャ……
左側のドアが開いて最初に飛び込んできた光景は、
ローファーに長い濃色のソックス、チェック柄のスカートからしなやかに伸びた長く美しい素脚。そのスカートも気にせず少し開き気味に左足爪先から先にそしてクルリ!と右足が慎ましやかに揃って車外に降りた。
すっ!くと優雅な動作で立ち上がった背の高いスレンダーな女…いや女生徒?は少しウェイビーな長い髪をふぁと風に梳かしてこちらに向かってニコリと微笑んだ様に見えた……が、夕陽を背にしてたからその表情はよく窺い知れない。
……
てっきり脂の乗った中年男が這い出してくるものばかりと決めつけてたから!才子と森は我が目を疑った。
「
森がボソリと呟く。
胸元にリボンを結ったベージュ系のセーラー服にカーディガンを羽織った女生徒が寄り添う様に
いや、爺ちゃんの作業場によく置いてあって時折りパラパラ捲る自動車誌の其れ等としても遜色ないばかりか、何か溢れる様な気品と優雅さがあって、多分おんなじ高校生だろうに不覚にも私は思わず見惚れてしまった。
隣の森の口は半開き眼は点になっている。
やがて此方にむかってしずり……と歩みを進め始めた彼女を見て、勿論血に飢えた走り屋……そんな輩が漫画ででも今も本当に存在するのか知らないが……とは余りにもかけ離れたそのドライバー像に少々戸惑いを隠せないながらも未知との遭遇、いや邂逅すべく私達もドアを開けた。
少しひんやりとした山の夕暮れ時の空気が肌に触れ、車内より少し大きく響くラロラロラロ……と今では耳慣れた規則正しいアイドリング音、少し興奮した心と身体をそして初心者故に高回転で回してしまった空冷4
更に意表を突かれたのは、その両方の鼓動の、その向こうから、聖マリアンヌの女生徒の発した思いがけない一声だった。
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