第11話
大正4年の秋で数え年四歳の私を連れ、信玄袋を一つ背負い、見知らぬ遠い蝦夷の地は余程の決心でなければ行けなかったであろう。
赤羽駅を過ぎた時夜行列車で、うとうとと居眠りをしている間に懐の財布を掏られたのである。隣の人に知らされた時は掏りが降りる処で、車掌さんに知らせた時は改札を出ようとしていたそうである。
切符は有ったが三十円入った財布は無く、子供を連れて旅のしようも無く、車掌さんにお願いして五円貸して貰う事になった。お金の返済は帯広に着いてからとし、又犯人が捕まって財布が戻ればその中からと、犯行を見ていた人もあり親切な車掌さんに母は感謝したであろう。
(後に此の出来事は掏りが捕まって財布が戻り五円差し引いて帯広駅に送られてきたそうである。)
財布を掏られて五円借りた暗い旅であった。
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