#9

 この直後だ。


 ロックを掛けた筈のドアから一気に距離を詰め寄せてきた海奈にぐいと背中を押され、なされるがままにベッドまで移動した。そのまま海奈に押し倒されると、身体に跨がられた。


 馬乗りになった海奈と目が合い、しばらく見つめ合う。二人の間を不釣り合いな呼吸が流れる。顔を近づけると上気した二人の唇がそっと重なり、互いの熱気がゼロ距離で伝わった。次第に舌を絡ませ合うようになると、貪るように彼女を抱きすくめた。


 どくどくと鳴る心臓の鼓動が彼女とシンクロする


──気付けば互いに生まれたままの姿になっていた。


 海奈の身体に触れる度、声が漏れる。それは六畳ほどの部屋に反響すると、馴染むように鼓膜を揺らす。指先に触れた彼女の歯は唾液で薄く糸を引いていた。舌に触れ、薄っすらと桃色の唇を撫でると艷やかに輝かりを放った。頬にそっと触れ、首元、胸、くびれとなぞるように指を這わせると、彼女の身体がビクビクと反応する。同調するように震える声は、少しずつ湿り気を帯び、いわけない雰囲気がより興奮を加速させる。彼女の乳房から汗がすっと流れ落ちると、艶のある白い肌が一層輝きを放ち、妖艶さを助長した。


 乾きはゆっくりと潤いに、喘ぎは受け入れるように快感に転ずる。


 全身性感帯となった海奈は絶頂を繰り返し、その度に大きく身体が跳ねた。シーツを逆手に鷲掴みにしながら、藻掻くように全身をくねらせる。


 規則正しく動く腰はだんだんと速度を増す。そして、それは唐突に終わりを迎える。


 どくどくと体外へ射出された白濁の液体は、そのまま彼女の身体へ流れ込み、一体となる。


 それまで脳を支配していた快楽は曳きながら消滅してゆき、倦怠感が次第に芽を出す。


 合体したままの二人は、身体を重ねたまま余韻に浸り、接吻した。


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