#3

「博士、青木がノンレム睡眠状態になりました。現在の彼の身体状態からレム睡眠は二十二分と十六秒後が妥当と思われます。機器感度良好、問題ありません」


「ふむ。では、彼には少々酷かもしれないが、実験再開だ。あと五回は同じ記憶を彼に上書きしてくれ」


「承知しました。実験番号003コード199タイプヒューマン、テスト再開します。」


 研究員の男が言い終えると、コードが表面から規則的に伸びている立方体の機械の電源を入れた。来栖とは特殊なガラスで隔てられた博信の部屋に、重低音が響き渡る。


「これは君が選択した道だ、青木君。私なら絶対にこんな真似はしないがね。君は正に気狂きちがいだよ……私よりも、ね」


 来栖は、ガラス越しに嘲笑に似た笑みを浮かべた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る