#2

「あああああああああああ! ──あ?」


 がばっと上半身を起こした博信は、目の前に広がる景色が先程と似ても似つかないかったが為にひどく混乱した。


 頭を縛られる感覚に苛まれ、鈍痛が駆け巡る。


「う、うぅぅ……」


「お目覚めですかな」


 いきなり右側から声を掛けられ、博信はグルンと首を回した。勢いよく回った首が、ぐきっと鈍い音を立てる。びりりと電撃に似た痛みが走り、思わず悶絶する。


「あっ……ぅ」


「まぁ落ち着き給え。実験結果はなかなか上々だ……おっと、頭のそれはまだ外さないでくれよ? データをまだ完全に構築できてないんでね」


 声の主の正体が分からないまま、博信は頭に手をやった。


 額から後頭部までをすっぽりとネットのようなものが覆っており、その上からコードがいくつも伸びていた。


 首の痛みが治まってきた博信は身体ごと声の方へ向き直った。そこには白髪と無精髭をふんだんに生やした白衣の老人が座していた。


「あなたは……」


「ふむ、もしかして記憶が飛んどるのか。……まぁ無理もない、しばらくベッドで休んでいるといい」


 博信は今にも質問したい気持ちに駆られたが、頭が重たいままの状態では思考が追い付かず、餌を求める鯉のように口をパクパクさせるのが精一杯であった。老人に言われた通り身体を倒すと、睡魔が脳を支配した。


(さっきの老人、どこかで……そうだ、来栖。そうだ来栖博士だ! しかし、なんで私は来栖博士の事を知って……)


 数分もしない内に頭の回路に霧がかかり、博信は深い眠りについた。


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