#4
残響がくぐもりながら尾を曳き、数秒すると静寂があたりを包み込んだ。
身を小さく屈めたまま蹲っていた夏海はゆっくりと顔を上げた。得体のしれない何かが動き出した──そう感じざるを得なかった。
しばらくここで様子見しようか、いや、それではいつまで経っても前に進まない。……移動しよう。
夏海は懐中電灯で足元を照らすようにして部屋を後にした。
✽ ✽ ✽
警戒しながらやっとの思いで離れに繋がる通路まで辿り着いた夏海は愕然と立ち尽くしていた。
通路が不規則に積まれたコンクリートの山で覆われていたのである。天井が抜け落ち、そこから僅かに外の光が漏れている。
先程の轟音はこれだったのではないか……呆気にとられていた夏海だったが、どうにか通る事は出来ないだろうかと、コンクリートの山を退(ど)かそうと試みた。しかし微塵も動く気配がない。
それならばと瓦礫の上を這って登ってみると、腕が通るほどの穴がぽっかりと空いているのを発見した。そこから向こうの様子を伺おうとして、止めた。
──何かいる。
向こう側の建物の柱かと思っていた部分が、少し手前に動いた……そんな気がした。音を立てないよう、慎重に穴に顔を近づける。
どぅるん ぷちゅう
何とも言えない不快音が耳に届いた。夏海は思わず顔を顰めると、瞬く間に柱が消えていた。
見間違えるはずはないと動揺を隠せずに目を瞬かせていると、突然右腕の力が無くなった。
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