#2

 玄関ホールに入ると、リュックサックから懐中電灯を取り出し、一歩ずつ慎重に歩みを進める。ひとまずの目的地はこの施設の離れに行く事である。


 踏み込む度にガラス片がぱきぱきと音を立てて割れた。少し大きめの木片を踏んづけた時に、ばきっと大きな音を立てて折れたので夏海は思わず身を萎縮させる。


 館内は外と違い、肌寒いくらいにひんやりとしていた。空気が重く感じられ、無意識に動きが鈍くなる。


 動きやすいようにと薄い長袖のスポーツシャツを着てきたが、何か羽織るものも持ってくるべきだったなと夏海が後悔していた。その時、後方で何かが動く気配がした。ばっと振り返り、辺りを照らしたが特に変わった様子は無い。


 心臓の鼓動が恐怖心を煽るように速くなる。耳にばくばくという音がこべりついたように鳴り止まず、静寂に心音が反響する感覚に陥る。何かがおかしい、早く逃げるべきだと頭に本能的に警告音が頭で鳴り響く。


 じりじりと後方に向かって進み出した夏海は、一気に元に向き直ると全速力で走り出した。


 吐く息が短く途切れる。どこをどう走ったのか全く分からなくなった夏海は、角を曲がった先に現れた扉を乱暴に開けると、勢いよく閉めた。肩で息をしながら扉に#凭__もた__#れ掛かると、そのままずりずりと腰を下ろした。


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