#4
「着きましたよ。ここがA研究区です。主に脳機能の研究を行っています」
そこは、この施設に来て最初に見えたような長い廊下がずっと伸びていた。違う事といえば先程まで通ってきた場所に比べ明るい事と、等間隔に認証用カードリーダーの付いた扉が両隣に設けられている事くらいだ。目測で3メートルほど幅があるその廊下では、研究者と思しき人たちがセグウェイに乗って移動していた。
「博信さんはセグウェイに乗ったことは?」
「何年も前ですが、あります」
「ではこれで移動しましょうか」
飯塚はそう言うと、エレベータ横にあるカードリーダーに自身のカードを翳した。すると、すぐ隣の足元にある窪みからセグウェイが出てきた。
「博信さんもどうぞ」
促されるまま一連の動作を真似ると、同様にセグウェイが出てきた。
博信は数年振りのセグウェイに最初こそ少々苦戦していたが、すぐに慣れると飯塚の斜め後方に付いて走った。
「この部屋一つ一つで実験内容が異なりますが、隣り合っている部屋は互いに透過できるようになっております故、どんな実験をしているのかを覗くことも可能です」
「不透過もできるんですか?」
前を見据えたまま身振り手振り説明する飯塚に、博信は訊いた。
「勿論です。研究内容によっては、このLEVEL2ですら極少数の人間しか知り得ないものも少なからず有りますから」
「それはとても惹かれる内容ですね。是非私も加わってみたい」と博信は興奮気味に言った。
「ふふっ、あなたは実に運が良い。今日あなたに紹介するのは正に今言った極秘の研究所ですよ」
「本当ですか! そういう事なら早く栗栖博士の元へ行きましょう!」
博信が思わず前のめりになると、セグウェイから落ちそうになり、慌てて姿勢を正した。この何とも言えない速度がもどかしくて仕方ない。
「そう言うと思っていました。では早速──」
その時、今通ってきた道の奥から、悲鳴に似た大声が聞こえた。
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