#2
博信が研究員になってしばらく経ったある時、彼に一枚の封筒が届いた。
デスク前にある椅子に深く腰掛けると、封筒の頭を鋏で切って開けた。中には自分の顔写真が貼付されたカードが入っており、右上には『LEVEL2入場許可証』と小さく書かれていた。
「噂で耳にした事はあったが、まさか実在していたとは……」
一人でそう呟いて、カードを裏返すと『11A8B77900Ch.W』と書かれた付箋が貼ってあった。博信は徐に職員専用端末の電源を入れると、施設専用のアプリを開いた。18桁のパスワードを入力すると、数字と英字が入り混じった文字列が画面全体に現れた。暗号表である。博信は先程の文字列を解読すると、壁掛けの時計に目をやり、ゆっくりと立ち上がった。
研究所の離れに移動した博信は、奥から2番目の職員専用エレベータに乗り込んだ。F2から6まで並んだボタンに手を伸ばし5、1、F2、4の順で押すと、『LEVEL2入場許可証』をカードリーダーに翳した。ガコンと鈍い音がすると、階数電光掲示板にFFと表示され横開きの扉がゆっくりと閉まった。
暫くエレベータ特有の浮遊感を感じていた博信だったが、ほどなくして扉が開いた。
扉が完全に開き終えると、長身で頬の転けた白衣姿の男が左手から現れた。
「お待ちしておりました、青木ジュニア・フェロー。私は
飯塚と名乗る男は一気に言い終えると、ニコリと微笑んだ。
ジュニア・フェローとは研究員や特別研究員の呼称で用いられる言葉である。
「青木で良いよ、飯塚さん」
博信がそう言うと、飯塚は博信に一礼し、前方に真っ直ぐ伸びている廊下を歩き出した。
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