第24話 ぶんかさい
「かばん、サーバル、準備は良いですか」
「はい!」
「大丈夫だよ!」
二人はオイナリサマから貰った制服に身を包んだ。
そう、今日は“ぶんかさい”の日だ。
「ケイくんごめんね、待たせちゃって」
玄関を出て謝った。
「全然。友達が下で待ってるから送ってあげるよ」
「ありがとう」
そして、かばん達が準備をする一方、
結人達は...
あの日以来真希は休みがちになった。
今でも心の中に引っかかるものがある。
しかし、具体的な解決方法が思い付かない。結局、八方塞がりな訳だ。
お手上げだった。
うちの学校は中高一貫のため、
中学生でも、結構豪華にやる。
で、俺達のクラスの出し物は...
っとその前にこんなことがあった。
《文化祭前日》
「こ...、これ...」
「いいねいいね!!インスタ映だよ!」
「あっ、いた!おい里奈!なんで....」
「ゆっ、ゆいと...!?」
里奈に強制連行された博士を探しに来たら...
「そ、その服...」
「良くない?良くない?」
煽るように里奈は言った。
「よっ、良くないですよっ...
お、長として...、こ、この服は...」
顔を赤らめながら言う彼女に思わず俺は
「・・・かわいい」
「・・・えっ?」
「似合ってるよ。メイド服」
「・・・」
褒められるとは思ってなかったのだろうか。更に照れて顔を赤くした。
「お、長なのでどんな服も似合うのは
あ、あっ、当たり前なのですよ」
「つか、里奈はなんでこんなの持ってんだよ...」
「やっぱりね!似合うと思ったんだよぉ〜!!」
嬉しそうに里奈は言った。
(うち、チュロス売るだけなんだけど...まあいいか...)
「そう言えばユイユイ、コノハちゃんのことかわいいって言ってたよね!?
もうホント二人とも尊すぎ!
ヤバぃー!」
里奈は興奮した様子だった。
「わ、私がかわいいのですか?」
声を潜め、気恥しそうに尋ねる。
「...うん」
正直に感想を言ったまでだ。
「ふふっ、やっと美しさ、賢さ、可愛さを兼ねた、さいしょくけんびになれたのです...!」
博士は目を輝かせて言った。
「良かったね...」
「当日も着てくれる?」
「この服を着ることによって私の
賢さがアピール出来るなら着るのです」
「じゃあ着るってことね!」
里奈はパチパチと手を叩いた。
「良かったねゆいまーる!未来の奥様が着てくれるって!」
「なんで俺の名前が沖縄の言葉になってんだよ...、ってか誰が未来のって...」
「事実じゃないんですか?」
(言ったのお前かよ!!)
心中でツッコミを入れた。
そして、文化祭当日に戻る。
朝、HR前
廊下を歩いていると遠くから歩いてくる人を見つけた。その人物が誰だかわかった瞬間、俺は顔にお冷をぶっかけられた様に目を醒まし、即座に物陰に隠れた。
廊下に数人人がいて良かった。
アレは真希だ。あのまま、直進していたら俺は隠し持っていたナイフで刺されて...って、考えすぎか...。
俺は真希が通り過ぎるまで息を潜めた。
「あっ、星田くん...」
(ん?星田?)
俺は物陰からこっそりと覗き見る。
前方は俺のクラス。
後ろの出口で真希とスバルが鉢合わせした状態だ。
息を殺し存在を消すことを意識しつつ、
その様子を伺った。
「ああ、久しぶり、京ヶ瀬さん。
具合は大丈夫?」
「うん、心配してくれてありがとね…
あの...」
「なに?」
「星田くん、
午後仕事無かったよ...ね?」
「あぁ...、そうだけど?」
「一緒に...、回らない?」
「ファッ!?」
思わず気賀が言いそうな驚いた声を極限最小音量で言ってしまった。
「えっ?ボ、ボク!?」
「あっ...いや...、そんな...、
ひ、1人だと寂しいし、話し掛けてくれる友達、星田くんぐらいしか...」
「えっ...やっ、別に僕は大丈夫だよ。
うん。全然!」
「良かったぁ...。
楽しみにしてるね!」
「あ、ああ」
真希が教室に入っていくのを見て俺は物陰から飛び出し、スバルの前に現れた。
「ゆ、結...」
「スバル!お前は命の恩人だ!!
ありがとう!!」
「は、はぁ?」
「危うく博士が唐揚げになる所だったよ...!」
「い、意味がわから...」
「幸せになれよ!」
トントンと、肩を叩いた。
「えぇっ...、
何が一体どうなってんの...?」
困惑した顔を浮かべるスバルであった。
俺も午後博士と一緒に巡る予定だ。
真希と同じ時間だが彼女はもう、スバルに擦り付けることが出来た。
言い方は悪いが、最高だ。脅されることもない。
昨日言った通り、博士はあの服を着た。
恥ずかしさよりも、俺に褒められたことの嬉しさが勝ったらしい。
まあ、最後のイベントと考えれば...
良い思い出を作ってほしい。
「へぇー!ここかぁ!」
(そう言えば僕達はまだこの世界で、博士さんに会ってなかったね...)
「....」
3人も学校へやって来たのであった。
博士のお陰なのか、うちのクラスには人が沢山来た。けもフレなんてこっちじゃ昔の話だから、知ってる人は物好きかガチ勢ぐらいしかいない。
「おお、結人!すげえ盛況だな」
何食わぬ顔でテーブルに手を置きそう語ったのは、気賀だ。
彼には色々と翻弄された。
「いやあ、なんか、生きてて良かったね」
「お前、そんな無駄話をする為に並んでたのか?買うんなら早く買えよ」
「お金ないです」
「は?」
「冗談冗談!1つでいいよ」
笑いながら金券を取り出した。
「...博士から受け取って」
「おかのした」
「ご無沙汰です教授」
「コスプレ!?コミケかよ!!
後で撮影したいから、いいっすか?」
「...考えておきますよ
(オーケーとは言ってない...)」
「頼むよ〜」
気賀はニヤつきながら、帰って行った。
「あれ?気に入ってたんじゃ?」
「いやぁ...、あまり写真には撮られたくないので...。くろれきしを多く残すのは長としてどうかなと...」
しっかりしているのかしていないのか
よくわからない。
(つーか里奈に絡まれた時点で負けな気するけど...)
そんな調子で仕事を進めた。
「このヤキトリって美味しいね!かばんちゃん。なんで食べないの?」
(流石に助手さんの前で食べる訳には...)
「あれ?助手なんでそんな離れた所にいるの?」
「サーバルちゃん...、早くヤキトリを食べようか...」
午前の仕事が一区切りしたので、
俺と博士はフリータイムだ。
一緒に散策する事にした。
もちろん、博士は着替えて...
そして、結人達と、あの3人組が出会うのだった…。
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