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オヤジもといアルノーから「キャラベル共和国が戦争の準備してるぞ☆」という報告があって、アーダルベルトが斥候を放ってから、更に数日。ワタシは本日、城内にあるラウラの研究室っぽい塔へと向かっている。そこは城の魔導士達が集まって、色々と日夜研究とか勉強とか魔法の改良とかしているらしい場所だ。一般人には立ち入り禁止で、入り口に結界魔法張られてるので、マジでリアルに立ち入り禁止区域である。
なお、別に中で
……ヲイ、非力なワタシと魔法適正低すぎるライナーさんを、そこに召喚するなら、迎えぐらい寄越せ、
結界が発動しているせいで触れてもびくともしないドアの前で、ライナーさんと二人立ち尽くす。だって、どうしろって言うんですか。ワタシにもライナーさんにも、これを解除する手段なんて存在しませんぞ?来いって言ったのラウラのくせに、これじゃ中に入れないじゃんか!
「おやぁ?お客様ですかぁ~?」
「……ハイ?」
妙にふわふわとした、天然ボケ系キャラに違いないと思わせる声が聞こえて、ワタシは頭上を見上げた。そこには、ドアの上にある2階の窓から、不思議そうにワタシ達を見ている女性の姿があった。……テンプレや。物凄いテンプレな、天然ボケ系お姉さんキャラがそこにおったで…!
ゆったりと編んだ三つ編みお下げに、大きなレンズのずり落ちそうな眼鏡。魔導書なのか分厚い本を手にした女性は、ワタシと目が合うとにっこりと笑った。年齢不詳というか、ふわふわしすぎてて大人だったとしても何かこう、年齢聞きたくない系のお姉さんだった。いや、可愛いんだけどね。めっちゃ可愛いんだけどね!
「ラウラに呼ばれて来ましたけど」
「あぁ~、じゃあ、貴方がミュー様ですね~。素敵な黒髪黒目です~。ドア開けますから、待っててくださいね~」
端的に答えたら、お姉さんは一人で超嬉しそうにしながら、くるりと背を向けた。その後、カンカンカンという駆け下りてくるみたいな足音が聞こえたので、ドアを開けるために降りてきてくれたのだろう。お手数おかけします。文句は全て、あのロリババアによろしくお願いします。呼び出しておきながら入れないドアのこと忘れてた、あの
ガチャリと普通にドアが開いて、さっきのふわふわ系お姉さんがワタシ達を手招きしている。素直に従ったら、そのまま塔の中を案内してくれた。曰く、「うっかり
連れて行かれたのは、塔の中腹にある部屋だった。ラウラの研究室その1らしい。その1ってのは、分野によって研究室を変えているからで、この研究室その1は、魔導具を作ってる場所、らしい?
「おぉ、やっと来おったか」
「何が来おったか、だ!ドアが開けられないで立ち往生してたから、このお姉さんに助けて貰ったわ、このロリババア!」
「……あぁ、すまぬ。そうであったな」
ケロッとしているラウラの頭をぶん殴りたかったのですが、ロリババアとはいえ見た目は幼女。ここでぶん殴ったら客観的に見て幼児虐待になるんじゃ無いかと思うと、ギリギリしながらも殴れなかった。……ラウラなら、ワタシが殴ってもちゃんとダメージ通ると思うんですよ。魔法系の宿命で、こやつ、防御力が紙のようにぺらっぺらだったから。良い装備品つけてても、最終決戦の段階で、防御力がアーダルベルトの十分の一ぐらいだったから!
……いやまぁ、覇王様が圧倒的なまでの防御力を誇ってらっしゃったのは、事実ですが。そりゃそうじゃん。獅子の
「で、ワタシを呼び出して何の用事?」
「うむ。お主にちょっとぐらい戦闘力を付加出来んかと思ってのぉ」
「出来んの!?」
思わず食い気味で叫んでしまいました、すみません。いやでも、ほら、ワタシむっちゃ非力じゃないですか?んでもって、先日ウォール王国の一件で、ついうっかり刺客なんぞに襲われちゃったじゃないですか?しかもその報告聞いた覇王様が、《うっかり力加減を間違えて》執務机さんを粉砕しちゃったじゃないですか?……ワタシ、自衛手段を確保しておかないと、アーダルベルトに無駄に心配かけるんじゃね?と思ったわけですよ。
とはいえ、運動神経が鈍いというか、ギリギリ繋がってるんだろうな☆みたいなレベルのワタシに、武術を習うことなんて不可能です。付け焼き刃もいいところだ。下手したら自分の持ってる武器で怪我するわ。乗馬は必須科目と言われて、とりあえず何とか、一般レベルにまでは漕ぎ着けましたけどな。それも、気長に付き合ってくれたウサギ獣人のお姉さんのおかげです。今度改めてお礼に行こう。シュテファンお手製の異世界スイーツ持って。
「世の中には、お主のように高い魔力を持ちながらも魔法の適正が無く、宝の持ち腐れのようなヒトが多くてのぉ」
「多いのかよ」
「決して少なくはないな。……それで、じゃ。そういった者達の魔力を有効活用するべく、魔導具の開発に専念しておる」
にっこり笑顔のラウラ。……あー、見た目だけはマジで
「台所で料理番達が使っておる火種もワシらの発明じゃぞ」
「あ、あの超便利そうなコンロ、ラウラ達が作ったんだ?早くもっと一般に普及できるように改良したげて」
「原材料と開発にかかる労力で、量産はまだ出来んのじゃ」
「早よ頑張れ。世のお母さんのために」
ラウラの頭を撫でくり撫でくりしながら告げたら、やれやれと言いたげな顔で見られた。……ちっ、このロリババアめ。外見だけならば愛らしい幼女だというのに、中身はババアだし、厨二病拗らせてるしで、ちっとも愛らしくねーわ。つーか、これと旅してたとか、本当にアーダルベルトは偉大だ。魔法代表がロリババアで、物理代表がオヤジとか、10代の皇太子様のパーティーとして寂しすぎね?
「それで、じゃ。実戦でも活用できそうな魔導具の開発にも取り組んでおってな」
「ほぉ?それはつまり、攻撃魔法が撃てちゃったりするん?」
「今作っておるのは、遠方に爆発魔法を放つ魔導具じゃ。で、ミュー殿それの試運転に付き合ってくれんか?」
「何でまたワタシ?」
「魔力はあれど魔法が使えない、という存在に使えるかどうかが重要じゃろう?」
「あー、まぁね。ラウラの周辺だと、皆さん魔法使えるモンな」
「うむ」
それ言っちゃうと、多少とは言えライナーさんとかにも魔法の適正はあるわけだし、使ってみたら案外あっさり魔導具起動出来ちゃうんだろうか。当人は補助魔法ぐらいしか使えないって言ってたけど、魔法が使えるってだけで、ワタシよりは遙かにアドバンテージあるよね。
んでもって、ラウラ達の最終目標は、魔法の使えないヒトでも使える魔導具を作ることだから、
つーか、魔導具使えたら、疑似魔法ヒャッハーが出来るってことですからね!
よーし、ラウラ!ワタシ、魔力の含有量《だけ》は高いと太鼓判貰ってるから、頑張っちゃうよ!自分のステータスとか見れないので非常に困るが、つまるところ、魔法使えない物理系のくせに、
目をキラキラしているだろうワタシの背中に、微笑ましげな視線が突き刺さってますが、振り返ったりなどせぬ!その視線の主が誰かなど、ワタシには解っている。ライナーさんです。ライナーさんが、「非力なワタシも武装できる?!憧れの魔法使えちゃったりするの!?」とwktkしているワタシを、実に微笑ましそうに、まるでお父さんのように見守ってくれてるだけです!いつものことだから、もう細かいことは気にせぬのだ!
「まぁ、ぶっちゃけお主に必要なのは攻撃ではなく防御方面じゃろうとは思っておるが」
「えー……」
「ただ、結界系は
「あー、確かに、結界とか防御とかは、オートの方が良いよね。頑張って開発して。あと、既に売ってるんだ?」
「何を言っておる。お主が付けておるそのイヤリングがそうじゃ」
「…………ただの
不思議そうな顔をしたラウラの頭を、すぱーんと叩いておいた。
いやだって、叩いても良くね?ワタシ、ゲーム知識の延長で、アミュレットって言われたから、付けてると防御力が上がる系のアイテムだとしか認識してないもん!このイヤリングが、実は任意発動の魔導具だとか、誰も教えてくれなかったよ!?
ライナーさん、知ってました?!あ、瞬きしてるって事は、知らなかったんですね。よし、なら悪いのはラウラです。頭ぐりぐりしちゃる。
「こりゃ、ミュー殿、ヒトの頭を押さえつけるでない。帽子が凹むであろう」
「煩い。そんな厨二病拗らせた魔女帽子なんぞ、凹んだところで誰も困らん。むしろ、ワタシにアミュレットの説明してなかったお前が悪いわ!」
そう、ラウラが悪い。だって、このイヤリング、ワタシちゃんと肌身離さず(お風呂と寝るときは外してるけど)身につけてるんですぜ?つまり、この間ウォール王国の刺客に襲われた時だって、ちゃんと装着してたんだ。お洒落じゃ無くて、防具として。それなのに、使い方教えて貰ってないから、全然役に立たなかった!
しかも、問い詰めたらこれ、任意発動の攻撃結界が封じられてるとか言うじゃないですか!防御するだけじゃ無く、敵意を向けてきた相手の攻撃をはじき返す能力まで持ってる、要人警護にばっちりな魔法が封じられてたんですよ!?それなのに、ワタシもライナーさんもエーレンフリートもそれを知らなかったとか、どういうことじゃ!このロリババア、マジでちゃんと仕事しろよな!?
その後、イヤリングに封じ込められてる任意発動の攻撃結界を起動することが出来たので、ワタシ、魔導具は使えるようです。マル。
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