クソつまらない人生の終焉
一瞬の沈黙。先ほどまでとは打って変わった静けさに、時計の秒針が進む音が聞こえてきた。
何をしなくても時は進む……そうだ、時は待ってくれない。
俺は清らかな青春時代を送りたい。いくら可愛かろうが、こんなところでわけのわからない女の子と付き合っている場合ではない。
「やっぱり……さっきの告白は無しで」
「『さっきの告白は無しで』を無しで」
……うん?
「あの、冷静に考えてみると、やっぱり俺にはねこりと付き合う資格なんて無いんだと思うんだよ」
「たぁくん、子供は何人がいいかなぁ。やっぱり一クラス分は作りたいから三十人ぐらいは欲しいよね? 今私達十六歳だから、三十歳まで頑張るとしても一年で二人ぐらいのペースで作らなきゃだよ。ってことはさ、時間ってやつは待ってくれないんだから、さっそく」
「でぇえええい、人の話を聞け! 喋りながらスカートを降ろすな! 子作りなんて、俺達がやるような年齢じゃないだろ! 大体一クラス分の子供達ってどんだけだよ!」
息をつかせぬツッコミの嵐に、肩で息をしながらねこりを睨みつける。
俺の眼光に竦んだねこりは肩を落とした。うつむく顔に陰りが見え、明らかに意気消沈といった様子だ。
あれ、強く言いすぎちゃったかな。別に俺はねこりが嫌いなわけじゃない。というかつい先ほどまで好きだった部類だ。
女の子を悲しませるわけにはいかない。俺はねこりに弁解の意を伝えようとして、
「……そう。はるくんは、やっぱり貧乳の遺伝子なんかいらないって言うんだ」
すぐさまやめた。
「ちげぇよ! 俺はただ、青春を感じられるような健全なお付き合いをいたしましょうって言ってるの! 青春という階段を一歩ずつ踏みしめながらキラキラとした青春に向かって光り輝く頂きの青春を目指したいの!」
「青春青春青春青春うるさぁ~い! なんなのさっきから、はるくんは青春ってやつに憑りつかれてるよ!」
「青春を目指してぬぁにが悪いんだこのハレンチ女が! そういうのは、まず服を着てから物を言え!」
「あぁ~! 今のはちょっとぷちっときたよ! はるくんだって、恥ずかしいところ伸ばして何言ってんの! そういうのは、服脱いでスッキリしてから言ってよね!」
「スッキリしたら事後じゃねぇか! 思春期男子舐めんな! それもこれも、お前が服を着れば解決すんだっつーの!」
「キシャアアア! シュワアアアアア!」
「応対が日本語ですらない!?」
ねこりは両手を合わせて固く握りしめ、巨大な槌を作って俺の頭上に叩き落とした。
人生の最期だというのに、抵抗する暇もなく、直撃を喰らった俺の脳漿が勢いよく飛散する。
自分の体内のえらくグロテスクな部分が元気よく登場し、資料室の中が赤く染まる。
意識がなくなる刹那、俺の血に染まり奇怪な雄叫びをあげ続ける彼女の声に混じり、どこかから女の高笑いが聞こえた気がした。
とにもかくにも、こうして、俺のクソつまらない人生は呆気なく終了した。
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