「どこ? どこって、そんな……」


 彼女の問いかけに、俺の頭は混乱した。


 どこが好きかなんて、彼女の優しいところだとさっき話したじゃないか。


 なんだろう、東雲さんは、別の部分をもっと褒めてもらいたいってことなのかな?


「えっと、明るいところとか」


「嘘」


「皆が辛い時に、元気いっぱいに声を掛けてくれるところとか」


「大嘘」


「ふとした時に笑って、皆を幸せにしてくれるところ」


「超特大ギガンティックマキシマムスペースウルトラアルティメットオメガ嘘!」


 いきなり叫んだ東雲さんにびっくりして腰が竦む。


 な、なんだ? 急に東雲さん、どうしちゃったんだ?


「ねぇ、本当のこと教えてよ……」


 顔に影が差し、ふらふらと頭を揺らして俺に問いかける。


「本当は、私の、どこが好きなの?」


 どうしよう。とてつもなく怖いんですけど。


 本当って、そんなこと言われても、俺は本当に東雲さんの事……。


 思いながらも、なぜだろう。俺の視線は、引き寄せられるように、俺に詰め寄る彼女の胸元へ伸びていった。


「ねぇ、これなんでしょ? これを好きにしたいんでしょ?」


 ブレザーの上からでもわかる二つの盛り上がり。彼女は圧倒的破壊力を寄せてあげて強調した。


「そんな、俺は、別にそういう意味で東雲さんに告白したわけじゃ」


「嘘だよ。だって、視線が私の顔を見てないもの。本当に私のことが好きなら、私の目を見てはっきり言って」


 言いながら、東雲さんはワイシャツのボタンを上から一つ外した。


 窮屈な牢屋から解放された欲望の獣の片鱗が、俺の視界を捕らえて離さない。


 朝シャワーでも浴びていたのか、桃の果実のような濃厚な匂いが絡みつく。


「……ほら、やっぱり、私の胸が目当てなんだ」


 馬鹿な……! 思春期の男子高校生がその魅力に抗えるはずないじゃないか!


 なんとか東雲さんの目をみようと奮闘したが、ぽよんぽよんと揺れる二つの双房に、俺の喉はごくりと音を立てた。


「ねぇ、触っていいよ?」


 東雲さんから発せられる蕩けるような甘い声に、脳のパルスはショート寸前だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る