平均Lv.1000の世界から来た俺は自由に生き抜く

ざんしょー

第1話 飽きた世界、新しい世界

──飽きた──


俺は、金属と魔法の衝突音が止み、夜へと化した戦場のど真ん中に座り、夜空に煌めく星を静かし眺めている。


──そもそも何故俺は戦っている?何故こんな意味のない争いをしなければならぬのだ。俺はこの手で何人の命を奪った?数えきれんな──


彼の名はアラン・ゴードニック。魔族として生まれ、若くして才能が有ったために戦場へと送られた。

彼は強すぎたために味方を傷つけた。そして傷つけぬために一匹狼として戦場を駆けた。その脅威と尊敬の意味を込めて皆はこう言った【魔王】と。


彼は探し求めていたのだ。争いが無く、平和に満ちた世界を。


──転生しよう──


意を決した彼は、極大魔法である転生魔法を使おうと術式を展開する。


──どうか、転生した世界は俺の望んだ世界であってくれ──


『心得た』


アランの声を聞いた神がいた。転生の神シャーラン。

アランは神に嫌われ、神をも殺してきた。そんな彼を神シャーランは最初で最後の願いとして受け入れてくれたのだ。


『後世は幸せであることを願っているよ。アラン』


──ありがとう──


その瞬間、彼は人生で初めての微笑みを見せた。そして、彼の意識はここで途切れた──


△▲▽▼△▲▽▼△▲▽▼△▲▽▼


「あら~元気な男の子ですよ!」


俺は意識が覚醒し、見慣れぬ後景を目にする。


──どうやら成功したようだな。この二人が俺の両親みたいだな。なんともまぁ、若い──


「聞こえるかー?パパでちゅよ~」


「ふふっ、それで、リードさん。名前はお決めになられましたか?


──名前か、楽しみではあるな──


「あぁ、名は......アランだ!」


──前世と同じだぁぁぁぁ!──

──いや、たまたまだ、うん、たまたまだ──


「アラン・ゴードニック。良い名前ね!!」


──名字もかよっ!──


そうして主人公ことアラン・ゴードニックは裕福な若い夫婦の元に産まれてきた。


暫く経ち、五ヶ月が過ぎた。アランは前世と同じようにすぐ歩けるようになった。その姿を見た両親はというと、驚き過ぎて気を失ったほどだ。

そして生後一年三ヶ月で喋れるようになり、またしても両親は気を失ってしまった。

どうやらこの世界は歩くのと喋られるようになるのはそんな早くないらしいな。


そして一年、また一年と年が重なるに連れて、アランは天才っぷりを爆発させた。


そして現在。15歳の誕生日にパーティーを行っている。前世ではなかなか体験出来ない行事に感激した。


「「ハッピーバースデートゥーユー!」」


「おめでとー!!」


近所の友人達も来ていて盛り上がっている。

俺はロウソクに灯った火を消し、運ばれたケーキを口に運んだ。


──それにしても、平和だな......。争いなどはないし、魔法術式は低下してる。まぁ魔物とか魔族はいるみたいだけどな──


「アラン君、君はもう立派な魔術師だよ。一年足らずで卒業したのは君が初めて。だから、プレゼントと卒業祝いとしてこれを」


彼女はセレン・アクラウト。俺の魔術教師だ。14歳の頃に剣と両立で習ってきた。セレンはこの世界では10の指に入るぐらい強い魔術師らしいがとてもそうは思えなかった。何しろ、教えてれたなかで一番難しいと言われた魔法が、上級魔法だからだ。

前世では当たり前の如く放たれた上級魔法を一番難しいと言われたらこの世界のレベルなんてたかが知れてる。


「どうぞ」


そう言われ、受け取ったものは1メートルある杖だった。木を材料に作られ、先端には魔法石が浮かび、それを四つの枝が守るように創られている。

この世界では杖を用いて術式を展開するらしい。

前世ではそんなの必要としなかった。でもまぁ───


「ありがとう!」


──嬉しいもんだな。人からのプレゼントというのは──


「アラン!俺たちからもあるぜ!」


こいつらは近所に住んでいる友人だ。左から、エルセ、レオ、スロウ、の三人だ。


「三人で作ったんだ、受け取ってくれ!」


それは、綺麗な石を糸で通して作られたネックレスだった。


「ありがとう、綺麗だ」


「そうか!」


その後景を見ていた両親は、親同しで話していた。


「アラン君、大きくなったわね~」


「いえ、全くです。つい最近まで赤んぼうだったアランだが見間違えるな」


「ほんと、魔術も剣術も何もかも出来てしまって教えることが何もありません」


「羨ましい限りです。うちのレオなんて剣術は出来るのに魔術なんてこれっぽっちも駄目で......」


「そうそう、うちのエルセは魔術は出来るのに剣術は全く駄目。ほんと、羨ましいですねぇ」


「でも、そんな子供達の成長を見てるのが微笑ましくなっちゃいます」


「「そうですよね~」」


──両親も楽しそうで何よりだ──


「アラン、外行こうぜ」


「あぁ、先行っててくれ」


──毎日が楽しい。転生して良かった。神シャーラン、本当にありがとう──


俺は外へ行き、今日という日を目一杯楽しんだ。その姿は魔王という面影がないただの少年の姿だった。

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平均Lv.1000の世界から来た俺は自由に生き抜く ざんしょー @Syouma1121

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