第12話 描いた魔法は刀に宿る
ダークは舌打ちする。
「ちっ、アイドル活動はどうしたよ、ウスバ?」
ロストさんも言う。
「言葉通りウスバは、シハイに支配されていたってかよ」
キングはウスバの相手をする。どんな言葉もどんなパワーも、ウスバはキングに通用しない。僕は叫ぶ。
「ウスバー、思い出せ! 僕達の思い出のキャラクター『ハゲトラ』を」
アオイはつぶやく。
「ウスバは結局、魔法刀を名刀には出来なかったのね」
ゴウも言う。
「まだだぞ、アオイ」
魔法を描いたハゲトラの刀は、ヒーローショー用のおもちゃに近い。魔法刀は扱い易さに特化している。キングはウスバに声をかける。
「これがウスバの魔法。その正体は、ヒーローショーを盛り上げる悪役のようだ。俺のユメを知っているのか、ウスバ!」
ウスバは我に戻る。
「キングのユメ? シハイ様のユメ?」
キングは高い理想へと向かう。例えそれが他人にとって価値のないものでもだ。
「俺はまだ『ユウキ』を倒していない。ユウキを倒すユメはいつかきっと叶うと、俺は技を磨く」
ウスバはつぶやく。
「キングは本当の悪役だったんだね」
悪役は、託し続けた歴史の上に立つ。僕はロストさんに頼む。
「ロストさんに運んで欲しい物がある。僕の宝物だったけど今はただのゴミだ」
「実体をロストさせる!」
と、ロストさん。人形ハゲトラの設計図だ。僕はこれを見て、刀に少しだけ興味を持った。名刀を次々生み出すキャラクターだ。ウスバが『刀が偉いのか』と問うたのを、僕は覚えている。魔法刀が、遂にキングを捉えた。ウスバはさらに追撃。僕はさ、これぞ悪役っていうのが格好いいと思うんだ。解りやすく、非道である、そんな悪役だ。
僕はそんな悪役に憧れて、演じるんだ。子供でも悪いヤツって一発で解る、やってはいけないというメッセージだ。結局ヒーローに倒される普通の悪役さ。ウスバはもう自分を取り戻して、ゴミつまり設計図を眺めている。
「ねえ、アクイ。名刀がたくさんあったら、どれが本当の名刀か解らないね」
僕は一言。
「ハゲトラの名刀の中で、僕に記憶されていないものがあるなあ。僕の意図に気付けるから民間人のエキスパートだ」
悪意を振り撒く悪役を僕は描く。民間人達をゆする僕。いや、これは演技だよ。民間人達もいい演技をしてくれる。少年アクイと少女ウスバの幼いユメは、今叶う。ウスバは叫ぶ。
「この外道があ!」
魔法刀が凄い勢いでやってくる。ねえ、ウスバさん。これ演技だよね? すごく痛いけど、ウスバのストレス発散ではないよね。オッサンは言う。
「観客達に魔法刀は認知された。理由など必要ない。描いた魔法が、刀に宿ったのだ。気に食わないが、俺達は魔法刀を名刀として認める」
魔法刀の魔法は、ただの願いだったんだ。
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