第5話

繋いだ手を握りしめたまま、タクシーのシートに座ると彼は髪に唇を寄せて囁くように言った


「俺んとこ行くよ?いいな」


コクリと頷いた


車が走り出すと窓の外を見ながら、指を絡めしっかりと繋ぎ直す


ネオンに照らされる無表情な横顔を見ながら、私は心の中で呟いてた



『ねぇ、俊…あれから、ずっと、好きでいてくれてたの?』



部屋に着いても、俊は口を開かず、

っでいて、まだ手を離してくれない


「ねぇ、手」


「あっ、わりぃ。

お前、離したらどっか行くんじゃねぇかって」


「俊…変わんないね」


「そっか?」


「…私のこと軽蔑してる?

付き合ってる人がいるのに、こんなところまでついてきて。

軽い女だと思ってるでしょ?」


「ふっ、思ってたらどうなんだ?」


「……変わった…と思ったかなって」


「そんなこと微塵も思ってない

軽蔑?軽い?

どうでもいい。余計な感情は何にもない。

今はたった1つだけ

柚希が…欲しい、それだけ

お前もそうなんじゃないか?」


「…そう……なのかも」


どちらともなく伸ばした手が触れると

何かが崩れ落ちるように、激しく貪るようなキスを何度もした


彼の懐かしい香りと唇の感触、大きな掌、冷たい指先

身体ごと心ごと一気にあの頃が甦った


「はぁ、はっ、俊…」


「柚希………会いたかった」


痛いほどきつく抱きしめられると身体が痺れて喉の奥が熱くなった


ベッドに転がるように倒れると真上にある彼の顔を指でなぞり、ゆっくりと目を閉じた


首筋からキスが降りてくると声が漏れる


「あぁっ、ンン」


「柚希の声、たまんない」


「やっ」


指先が滑るように濡れる場所へ沈む


「柚希は変わんないよ

何も」


「ンンっ、ぁん」


一気に繋がると身体がどっかいっちゃいそうで彼の背中にしがみついた


時おり、耳に響く彼の呻くような声が私の中の罪悪感を呼び覚ました

それに気付いたのか??

更に激しく動き出した彼


「しゅ…ん…もっ、無理」


「はっ、はっ

柚希…ゆず…き 」



何度も何度も私の名前を呼んで…昇りつめた



俊…やっぱり、

愛してるって言葉は

まだ…言えないんだね

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