第3話

変わらない毎日

一冊のノートはどの頁を開いても真っ白で誰も汚すことはない。

それが当たり前だと思ってた


でも、ある日、その空白の頁に真っ青なインクが一滴落とされた

やがて、インクはしみていき、1面青く染めていく


私は毎晩、Instagramを開くと真っ先にshun_0129を覗き、少しずつ増えていく投稿を見ているだけで、嬉しかった

それで良かったのに……


今日…目にした投稿に心が震えた


「5月晴れに柚子の花」と書かれ、青空に白い柚子の花が咲いてる写真

そのタグには

#大切な人

#愛しい人

#伝えられなかった思い

と添えられていた


俊…これって……

鼻の奥がツンとした


私はずっと我慢してきた"いいね”を押して、

急いで、yuzu-0514 のアカウント名をy-415に変更した

これなら、きっと私だってわからない

気付いてほしいっていう気持ちもあった……けど、直人に対しての罪悪感がそうさせていた


そして、数日後

私はたまらなくなって、コメントをしてしまう、彼の言葉を目にしてしまった


真っ赤な夕焼けの写真に……

「大切な言葉を伝えられなかった後悔はいつになったら、消えてなくなるんだろう」



shunさん、初めまして。

後悔しなくても大丈夫だと思います。きっと大切な言葉は何処かで同じ空を見上げる方に届いてますよ


y-415さん、ありがとうございます。そうだといいんですが。


何年ぶりだろう。

彼と会話した

小さなスマホの画面の中の文字を何度も何度も読み返し、窓からもう暮れてしまった空を見上げた


俊…届いたよ



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