第6話 噂

「そういえばさ」

「ん、何々?」

実樹はこちらを見て、微笑んでいる。私は何がその口から飛び出すのかと、ワクワクして、話を促した。彼女の情報収集力は他の追随を許さないほどで、それが明らかになった時には、引く手あまたな程だった。私も欲しかったというか、入学してすぐのことだったので、基礎知識を身に付けてからという、約束してくれていたが、あんの、〈天翔〉は横からかっさらったのだ。___無理やり勝負を挑み、賭けは負けたら、入ること。〈天翔〉は発言力が強く、噂になりやすい。噂にでもなったら、生きにくい。仕方が、なかったのだ。

吸血鬼ヴァンパイアが出てるっていう話があるの。知ってる?」

「知らない。いっつも、狩りに出されるから、噂なんて聞いてはいられない」

〈F〉はこの学園には数えるほどしかいない。5人程度だったような気がする。その内、三人が私たち。

数少ない、観察対象なのだ。今は私たちの〈血の関係しゅじゅう〉が気になっているらしい。特に命令を聞いているだけ。秘密は私たちしか知らないことを望んでいるのだから、教えるつもりは更々ない。

「吸血鬼、ねぇ。敵が潜り込んで?」

「いいえ、それはないわ。私の血が、それはないと、言ってる」

「あ、ああ....。敵感知能力ね」

「そ。だから、これは、関係者が行っているのよ」

「〈F〉かも、な」

小さくボソリと言った声は実樹に届いたのか、届いていないのか、判断ができない、優しい笑顔を浮かべていた。

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